(おっ)
(おたまっ!)
(おたまが無い!)
(これじゃあ、盛りつけできないじゃないか!!!)
(時間は!?)
(あと1分っ)
(もうだめだ)
。
。
。
「夢か・・・」
私は呟きながら布団を後にし、のそのそと薄暗い台所へ向かう。
時計の針はまだ人間が活動すべきでない時間を差している。
真昼の様な冷蔵庫の白い明かり。鉛の様な重い瞼に刺さって痛い。
汗ばんだ手で洗い場からガラスコップを拾い上げる。
ぬるい麦茶でゆっくりと喉を湿らせながら、頭の整理を始める。
「何度目だろうか。」
網戸を開け、狭いベランダへ出る。
雨だ。
天を仰ぎ、それから眼下でまだ眠っている住宅街を見下ろす。
夜の雨が無機質に降りそそぐ様は殺風景だが、心の波を落ち着けるにはちょうどいい。
「夢は深層意識が表面化したもの。俺は不安なのか。」
突如、北側から舞い込んできた強い風は「そうだ。」と私に言い放ったようでもあった。
**************
【 K.O.C. 】
最早ここでは説明必要。例年行われる漢(おとこ)達のプライドを賭けた戦い。
名残の花火の様に強く明るく、晩夏の夜空を彩るイベントが迫りつつある。
あの日あの場所で最高の料理を出した者が「完全なる」勝者だと思っているよ。
去年、プレスインタビューで答えたあの言葉。
メンバーや閲覧してくれる方々に対してではなく、今は自身を鼓舞する為にある。
練習が、時間が、アイデアが。。。既にそれらを気にしている段階では無い。
1時間に全てを叩き込む。
そして
「勝者は私」
|
|
|
|
※以上、Mr.ケビンことらくだ氏のブログ(9月1日更新分・聖地に想いを)より一部抜粋 |
|
|
|
この地球上には、大きく分けて2種類の人間がいる。
KOCを手にしたことのある者と、そうでない者だ。
第1回の開催以来、当たり前のように夏〜初秋にかけて行われてきたケビン集合。それは2014年度のケビン集合においても例外では無く、第9回目となる今年も9月は第1週に開催される予定だった。予報によれば天候・海況共に申し分なく、今年も楽しいイベントになりそうだと期待に胸を膨らませていた矢先に・・・。開催間近になって、一人、また一人と諸事情により不参加を表明し、ついに開催前々日の時点で参加者は3名になってしまったのだ。
最終的に参加登録をしていた3名のケビナーの名は、ジュゴン、ホリエモン、み〜ちん。
何れも実力には定評がありながら、未だKOCの栄冠を手にした事のない猛者達である。
ここまで読めば、もうお気付きだろう。
そう。ここに名前の無い残り3名の不参加表明者は、何れも過去のKOC優勝経験者である。彼らは自らが望んで手にした過去の重責に苦しみ、耐えかね、結果的に尻尾を巻いて逃げ出したのだ。冒頭にある前回王者が残した手記を読んでいただければ、その様子は容易に察しがつくのではないだろうか。
出場辞退にはそれぞれ事情があったとは言え、所詮言い訳は、言い訳である。
戦う以前に、土俵にすら上がって来ないなんて・・・。
仮にもこれで聖地のKINGを名乗っていたとは、まったく聞いて呆れる話だ。
我々3名の勇者はケビン集合を強行開催し、3つ巴のKOCを行う事も考えた。
参加人数が・・・?
過去の実績は・・・?
本命不在の・・・?
ふっ。笑止な。誰にも文句は言わせないぜ。
KOCの栄冠を手にする資格があるのは、その日その時に魚を持って聖地の炊事場に立てた者のみである。
至極、当たり前の話だ。
が、しかし。
今や世界中の名立たるスピアマンが・・・
いや、日本jy・・・
いや、、、ごく一部の暇なコアなスピアマンの方々も楽しみにしているKOC。
それを未勝利の3名が競い合って優勝を決めたところで、自他共に納得が出来ないということもまた事実。まぁここだけの話、私個人としても相手にするのがいつまで経っても準優勝しかできないJ氏と、昨年最下位(奈落の底)に沈んだH氏の二人となれば、一年掛かりで考案したせっかくの料理も肩透かしを喰らうというもの。
寛大な心を持つ3人の勇者は、己の表彰台が確約されているにも関わらず、弱き者に手を差し伸べ「開催延期」という名の時間的猶予を与える事にした。
しかし、それは過去の成功に縋り、未来への挑戦に怯える弱者にチャンスを与えたわけではない。
自分以外の者を、完膚なきまでに打ちのめすために!
そして今ここに、完全なる勝利を掴むために!!!
以下、第9回ケビン集合の参加メンバーです。
■2014年度 第9回ケビン集合 出場ケビナー
□ らくだ 9年連続9回目の出場 大阪府 自他共に認めるMrケビン
□ み〜ちん 6年連続8回目の出場 広島県 ケビン集合創始者
□ ジュゴン 6年連続6回目の出場 島根県 KOC審査委員長
□ ホリエモン 4年連続4回目の出場 島根県 ビギナーケビナー
|
■ケビン集合レポートの作成について
今回のケビン集合においても、ケビンノートと呼ばれる雑記帳に二日間の出来事や心の葛藤を書き記し、当レポート内に掲載させていただいた。
しかしケビン集合総書記長であるヌルハチ氏欠席の影響は想像以上に大きく、4名という少ない参加人数で、遊び疲れたうえに酒を飲みながら画像と活字を記録し、尚且つイベントを楽しむという事は本当に難しかった。
さらに実際に書記係をやってみるとこれがなかなか難しく、想像以上に仕事量が多いことにも驚かされた。酒が入り饒舌になったケビナーが不意に発する言葉の、要所要所を掻い摘んで確実に書き記す。そこに自分の意見を取り入れながら、翌年以降に繋がる文章に仕立てるセンスも問われる。
ヌルハチ書記長が不在の今、彼の存在価値の大きさを改めて知る良い機会になった。そう、ヤツはただの変態ではなかった。ヤツは優秀に書記の仕事ができる変態だったのである。
|