突行記 2010

『第8回 日本海遠征』
〜 秋の日本海 〜
突行日 2010年 11月 17日
 

 前日までは瀬戸内海突行を予定していたが、天候上の理由により当日の朝になって日本海遠征へと急転換。朝6時前にボラ男師匠と集合し、紅葉豊かな中国山地を越え、一路日本海へと車を走らせた。


■1本目 ポイントMS

 強い北風のために沖合いは若干白波が立ち、磯際には潮飛沫が上がっていたが、海況的には何とか許容範囲内のコンディション。透明度は湾内で15m程度、潮当たりの良いエリアで10m弱と、海況の割にはまずまず抜けている。先週まで罹っていた副鼻腔炎も完治した様子で、心配していたサイナスの通りも耳の抜け具合も全く異常無し。

 しかし、肝心の魚影の方は全体的に濃い印象を受けたものの、ベイトの接岸が全くなく、待てど暮らせど回遊魚の回ってくる気配は伝わってこない。エントリー直後にある実績の高い沖の瀬付近でしばらく様子を伺ってみたが、視界を遮るほどのスズメダイやメジナ、サンバソウの群れ以外に何の変化も感じ取れず、30分ほどで見切りを付け、さらに沖合いに位置する次なる沈み根へと足を運んでみることに。

 この辺りの水深は少し深めで、ボトムの深さが25m程度。春に痛めた足首の捻挫が完治せず、ワープフィンでの突行を余儀なくされる今の自分にはちょっと辛い水深であるが、潮当たりが頗る良く、なかなか期待値の高い“外せないエリア”でもある。

 まずは水深15mラインを平行移動しながら周囲の様子を遠目で伺ってみると、視界ギリギリの距離を悠然と泳ぐ良型のイシダイの群れを確認することが出来た。遠目で薄っすらとしか見えないが、中には60cmを超える個体も居そうな雰囲気。

 すでに息止め時間が限界に近づいていたため、余裕を持った駆け引きをするためにも一旦浮上し、息を整えてから再潜行。少し離れた所にある根の中腹に着底し、少しずつイシダイの群れとの距離を詰めながらイシダイの好奇心を擽ってみる。

「ゴリゴリゴリ・・・・・・。」

「ん!?」

 少し近付いてみると、イシダイの群れに混じって良型のヒラスズキが7〜8匹泳いでいるのが確認できた。サイズは60cm〜70cm程度。特に警戒する素振りも無く、横目でこちらを見るように射程の少し外側を右往左往している状況。

「イシダイを獲るか・・・、ヒラスズキを獲るか・・・。」

 射程にガンガン入り込んでくる捕獲基準に満たないイシダイ達をスルーしながら、どちらを獲るべきか迷っていると、イシダイの群れの中のボス格が数匹、すぐ近くの岩下へと入って行くのが確認できた。

「おっ、これはナイスな展開。ヒラスズキを獲って、それから岩下のイシダイを獲ろう♪」

 答えが出てから十数秒後、ヒラスズキの群れが1匹、また1匹と姿を消す中、逆にこちらに興味を示し、寄ってくる個体が2匹。そのうちの大きい個体の横っ面にヤス先を向け、射程に入ったところで勢い良くヤスを撃ち込んだ。同サイズのスズキより、強い引き込みを感じさせてくれるヒラスズキとのやり取りだったが、ヤスは両側の鰓蓋付近を綺麗に貫通していたため、取り込みは難無く完了。ヒラスズキ、68cm。地味に自己記録を更新。

 海面にて鰓を抜き取り、魚をストリンガーに通したのちに改めて先ほどの沈み根へと向かう。狙いはもちろん、岩下でオレを待ってくれているであろう大型イシダイの回収作業。潜行の途中からヤスゴムはMAXに引き、来るべきイシダイとの再会に備える・・・はずだったが、目的の岩下まであと少しというところで、中層付近で群れを成していたスズメダイの大群が不規則な泳ぎを見せたのが目に入った。

「これは魚群リーチかな?」

 そう思い、潜行を中断して辺りを見渡すと・・・!?・・・居ました、ヒラマサ!単体で、サイズは60cmほど。明らかな射程圏外をゆっくりと旋回し、いくら待ってもなかなか射程圏内まで入って来なかったが、しばらくすると何処からともなく2匹目のヒラマサが視界に姿を現した!サイズは一回り大きく、70cmクラス。しかもこの個体、オレに気付くや否や、身体を左右にくねらせながら興味津々の様子で近寄ってくるではないか・・・。

「んぅ〜。なんて良い子なんだ・・・」

 数秒後、労せずして射程圏内に突入し、何事も無かったかのようにオレの横を通り過ぎようとした健気なヒラマサに対し、青ヤスでも届くような距離からフルショットでヤスをぶっ放すオレ。ヤスは胸鰭付近の厚い部分を貫通し、チョッキもしっかり効いている様子。しかし、70cmクラスの回遊魚とはいえ、さすがにこの水深、そしてこのフィンで引っ張り合いながら浮上するのは骨が折れそうだな・・・、と思ったのも束の間。撃たれたヒラマサは爆走態勢に入ると、沈み根に沿うようにして海面へ向かってレッツゴー。ヒラマサ70cm強、危なげなく捕獲完了。

運良く獲れた2匹の魚

 再び水面にて取り込み作業を終えたのち、今度こそイシダイの待つ岩下へ。先程と同様、潜行の途中からヤスゴムはMAX引きでスタンバイし、3度目の正直で海底へと到着。

「待たせてごめんね〜」

・・・と、心の中で呟きながら岩下を覗いてみるも、中には大きな尺メバルが1匹居るだけ。

 ま、そんなに都合良く事が運ばないのが魚突きだよな・・・と自分を慰め、潔く次なる根へと移動することに。

 そこから約1時間は捕獲対象魚に出会うことなく、時間だけが経過する。魚影が薄いわけではないが、サイズ的に満足できる個体に出会えず。とある沈み根では3m四方の狭いスペースに5匹暮らしのキジハタマンションを確認したが、一番大きな個体を手尺で計測しても40cmを微妙に切る程度。イシダイに関しても捕獲基準には程遠く、回遊魚はサイズ不問でも遭遇無し。そろそろリミットの2時間を迎えようかという辺りで微妙に波酔いも始まったため、予定より少し早めにエキジットを選択した。


■2本目 ポイントBH

 場所を少しだけ移動し、2本目のエントリーを開始する。

 ここでのメインターゲットはイシダイ。過去の実績からすれば、良型イシダイはテッパンのポイントだが、それ以外の魚種の期待値は微妙な感じでもある。

 ところが、実際に入ってみると今日はイシダイの魚影が頗る薄い。湾外の沖磯を抜けた辺りでいきなり70cmクラスのヒラマサがフラフラと単発で現れたが、ここでもベイトの接岸が皆無であり、青物との遭遇もそれっきり。潮当たりの良い根周りでは数百匹に及ぶメジナの大群がやたらと目に付いたが、それに混じるイシダイはほんの数匹であり、しかもどれも捕獲基準に満たないサイズばかり。

 最初の1時間近くは何の成果も上がらず、テンションの上がりきらない空潜りに時間を費やしてしまったため、ここからは実績のあるポイントでのイシダイ探しは諦め、新しい「沈み根探し」に重点を置くことにした。新しい根が見つかればそれだけで十分刺激的だし、また何か大きなチャンスが廻って来るかもしれない。そう思いながら、今まで行ったことの無い沖合いへと捜索範囲を広げること約15分。水深17m前後の砂地ベースのフラットなボトムに広がる比較的大きな根を確認する。
 
 
沈み根の形状はなだらかな円錐型で、トップの水深が8m程度。決して起伏に富んだ雰囲気の良い根ではなかったが、根の側面にはいくつかの亀裂が入っており、周囲の環境からキジハタの好みそうな条件が揃っていると直感できた。

 案の定、一発目の潜行でいきなり捕獲サイズのキジハタと良型の美味しそうなオニオコゼを同時に確認する。もちろん狙うはキジハタで、オニオコゼは後回し。あまり動き回るタイプのキジハタではなかったため、捕獲に関しては楽勝だと思えたが、「キジハタ=頭撃ち限定」と決め込んでいたため、最初のアタックではヤスを放つことができず。透明度が比較的良かったため2回目の潜行以降も毎回のようにその姿を確認することができたが、横を向かなかったり、割れ目から出てこなかったり、すぐに割れ目に逃げ込んだりでなかなかヤスを撃ち込めず。結局このキジハタを獲れたのは7〜8回目の潜行時。このままでは埒があかないと判断し、割れ目の中にてホバリングしている状態のキジハタの脳天を落ち着いて貫き、強引に引き出す。キジハタ、45cm。

 想定外に時間と労力を費やしてしまったキジハタとのやり取りを終え、今度は根の反対側へと潜行を試みる。こちらには岩の割れ目などは無かったが、根から少しだけ離れた砂地の上に大きな岩が3つほど点在。その一番手前の岩下周りに、本日2棟目のキジハタマンションを発見する。しかも1本目のスケールとは違い、今度のキジハタマンションは圧巻のオール捕獲サイズ。40cmオーバーが2匹に、50cmクラスと60cmクラスが1匹ずつ。中でも最大サイズのボス格の体高は40cmクラスの2倍近くあり、老成魚の貫禄も十分で、とりわけ大きく感じられた。

 砂地ベースでの駆け引きであるため、死角を利用して近付くことができず、左手1本の動作で海底をゆっくりと這うようにし、真正面からアプローチ。無論、ターゲットはボス格の老成魚オンリー。

「子分達は面倒な動きをしないでくれよ・・・」

 そう願いながら、ヤスゴムはMAX引きで岩下のすぐ傍に陣取るボス格のもとへ。

 数秒後、無事にターゲットの射程圏内へと突入するも、キジハタの向きが真正面過ぎてヤスは放てず。ここからは久しぶりに気合の入る根競べ。しかし、相手が相手だけに、息苦しさはほとんど感じられない。いや、苦しいっていうか・・・、むしろ心地良さすら感じさせられるこの時空間。しばらくすると、4匹のキジハタのうち少し離れた2匹は微動だにしなかったが、ボス格の近くに居た1匹が危険を察知してか、そそくさと岩下へ逃げ込んだ。それにつられるように、ゆっくりと逃げの態勢を取り、岩下へ向かおうとするボス格の老成魚。おかげで頭は完全に横を向いたが、位置的には岩下の入り口という最悪のポジショニング。下手に撃って岩下に突っ込まれては厄介だが・・・迷ってる時間は無い。瞬間的に思い付いたのは、撃ち込んだ直後に海底の砂地へと押さえ付け、岩下への逃げ込みを阻止する作戦。要するに、チョッキを効かせずに捕獲できれば良いだけの話。

デブアコウ、ゲット!

 すでにロックオン状態のキジハタの頭部。そこに渾身のフルショットを放った。良い手応えを感じつつも手早くシャフトを握り、そのままの勢いで押さえ込みに入る。激しい抵抗を予測したが、結果的には完璧なキルショットが決まり、撃たれたキジハタはピクリともせず。今季一番の獲物を最高の形で捕獲し、勝利の余韻に浸りながら海面へのウィニングラン。浮上の途中、海底に目をやればまだ2匹のキジハタが逃げずにホバリングしているのが確認できた。でも、今日はもうこれで十分でしょ。記録級のキジハタも獲れたし、これ以上の上積みは次回以降のお楽しみに・・・ってことで、管理人の居なくなったキジハタマンションに別れを告げ、最初に見付けたオニオコゼを迎えに行った後、予定より少し早めの納銛としました。


 
 陸に上がって、早速2匹のキジハタをフィンの上に並べてみた。


我ながらグッジョブ♪

 やっぱデカいね。


 体高なんて、パねぇじゃん。


 大台いったか?


 もしかして自己記録更新したか??


 ボラ男師匠、オレやっちゃったかもしれないですよ♪


 むふふ。


 ワクワクしながらメジャーを当ててみると・・・ご・・・ん?・・・ごじゅう・・・あれ?・・・ごじゅうろくせんち??



 んなバカな。。。



 いやー、よく考えてみればワタクシ、50cmオーバーを手にしたのが2年振りなんすよね。昔はちょくちょく獲れてたような気がするのですが、最近はMサイズのキジハタばかり獲ってたので、頭の中のメジャーが完全に狂ってたみたいです。


 で、でもホント、体厚や体高は60cm級だったんすよ・・・!


 
はぁ〜。


 一人で盛り上がっちゃって、お恥ずかしい計測のひと時でした。


場所 日本海某所
−突果写真−
天候 曇りのち雨
海況 風弱く 波1.5m
大潮 満潮 11:00
透明度 10m
潜水時間 10:00〜14:30
最大水深 24.8m (19.8℃)
ヤス 3.5mチョッキ銛
フィン ワープフィン
突果 ヒラスズキ 68.0cm (自己記録)
ヒラマサ 72.0cm
キジハタ 56〜45cm×2匹
オニオコゼ 30cm程度




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