突行記 2010

『第9回 日本海遠征』
〜 師走の日本海 〜
突行日 2010年 12月 1日

 前回に引き続き、ボラ男師匠とオフ入り間近の日本海遠征。
 今後の海況次第ではあるが、もしかしたら今季最後になるかもしれないとの思いから、気合の入り方はいつも以上。海況、天候、体調、全てにおいて絶好のコンディションな上、釣り人は前回より少なく、上々なテンションとモチベーションでエントリーを開始する。


■ 1本目 ポイントMO

新旧アイシチョッキ

 この日の狙いは脂の乗った師走のイシダイ。もちろん、回遊魚やハタ科の魚もメインターゲットではあるが、今年に入って未だ60cmオーバーを1匹も上げていないため、この辺りで本腰を入れて狙いに行こうと思った次第。銛先も錆び錆びのボロチョッキから2年以上ぶりに新品のアイシチョッキに交換し、準備は万全。後はマイウーなイシダイが現れるのを待つのみ。

・・・とはいえ、いざ海に入ると優先順位なんてコロっと変わってしまうんですよね。

 何気なく空潜りしている際にも、「今日も青物の気配が無いなぁ」とか、「ぼちぼちキジハタは深場に移動する頃かな」等など、浮気心満載。

弁慶クラスを捉えたはずが…

 開始から15分程で幸先良く本日最初のイシダイの群れと遭遇したが、久しぶりに持って入った水中カメラを使いたいが故に、近くに居たメーターオーバーのコブダイの水中撮影を優先してしまい、いつの間にかイシダイの群れは1匹残らず視界の外へ。※この日は透明度が悪く、射程圏内で撮影にしたにも関わらず、あろうことか一枚も撮れておらず(涙)。

 若干不本意だったコブダイとのランデブーを終え、次なる沈み根へ。前回の突行時にヒラマサ&ヒラスズキを獲った根に行きたかったが、透明度の悪さに加えて潮流が早く、攻略は早々と断念して岬の先端方面へと足を運んだ。

 ここで再び本日2度目のイシダイの群れに遭遇するも、寄せている途中に良いサイズのキジハタを確認。考えてみれば12月にキジハタを獲った記憶が無いため、いつでも獲れそうな雰囲気のイシダイは後回しにし、ここではキジハタを優先させることに。しかし、捕獲を優先したキジハタは最初の潜行時に機敏な動きで岩下に入ったまま、それっきり。その後数回に渉る空潜りも虚しく、イシダイの群れも何処へやら。

 気付けばあっという間に1時間30分が経過。残り時間はあと30分。

 初心を忘れ、与えられたチャンスを自らの我侭により棒に振り、ここまではヤスを放つことすらできない展開。

 すでに半ば諦めモードで折り返し、適当に空潜りをしながら来た道を泳いで帰る際に、とある根のボトム付近で2匹の大きなイシダイを確認する。水深は17m程度の砂地ベースの海底から、プリンをひっくり返したような形の根が二つ。イシダイのサイズは50cmクラスと、60cmクラスが各1匹。あとは捕獲基準に満たないサンバソウが数匹と、無駄にデカいタカッパ。煩わしいコッパグレが数十匹。

 イシダイの姿を確認するなり、反対側の根の影に静かに身を潜め、軽めのゴリ寄せを開始する。

 ゴリゴr・・・。

 !?

 開始早々に大きい方のイシダイが一瞬寄り掛けたようにも思えたが、タイミングの悪いコッパグレの集団行動に過剰な反応を示し、一目散に視界の外へ・・・。でも、何となく逃げて行く雰囲気(後ろ姿)で解る時ってありますよね。「アイツは多分、帰って来るぞ」って。

 小さい方のイシダイは反対側の根周りでサンバソウ達と泳いでいたが、そいつらには目もくれず、大型のイシダイの帰りを待つ。待つ・・・。ひたすら待つ・・・。
 すると案の定、暗緑の彼方から再びフラ〜っと姿を現しましたよ。60cmオーバーのグッドサイズ。

 しかし、そろそろ息止めの限界も一緒にやって来たため、ここからじっくりとやり取りしている余裕は無い。ましてやこの状態で一旦浮上を選択すれば、もう2度とこの個体には出会えないだろう。ファーストチャンスがラストチャンス。最初に横を向いた瞬間に終わらせてやる。そう決め込み、集中を切らさず、根の影に身を潜めたままイシダイとの距離を測った。

 それからほんの数秒後、イシダイは一定の速度で射程圏内に突入・・・と同時に想定外に早いタイミングでのクィックターンを見せる!

「う、マジかよ!?」

 ・・・と嘆きながらも、撃つしかないとばかりに瞬間的に握力を緩めてヤスを放った。焦りと共に僅かにズレた手元とタイミング。普段の感覚からすれば明らかに遠い射程距離。狙いは頭部から少し離れ、胸鰭付近へと突き刺さった。・・・がしかし、これが功を奏したのか、はたまた新品のアイシチョッキの貫通力のお陰なのか、かなり遠目から放ったにも関わらずチョッキの返しは腹腔内に留まり、バラすことなくイシダイの動きを制御している。

結果オーライのシーズンベスト

「あの距離で、このイシダイが獲れちゃうの!?」

「このチョッキ、マジで凄ぇな・・・。」

 急所を外し、元気良く暴れ続けるイシダイを引っ張りながら、急いで海面へと浮上。

 ん〜。今までの経験でオレが培ってきた距離感は、一体何だったんだろう。

 イシダイ65.0cm、シーズンベスト確保。


12月のキジハタは初めてだね。

 無事にイシダイの取り込みを済ませた後、先ほどキジハタを見失った根回りにも寄ってみる。流れが良い時はこんなものなのか、最初の潜行で再び同一個体と思わしき良型のキジハタとご対面。水深は13〜14m。斜め下方向に向かう大きな割れ目の中で、こちらを向いてホバリング。チョッキを目の前に突き付け威嚇すると、キジハタは胸鰭を揺らせながらゆっくりと後退り。後退り。後退り。行き止まり。そして反転しかけた所をドスッと右側頭部に一突き!チョッキはそのまま左頬へと貫通し、余裕の面持ちで海面へ。キジハタ、50cm弱。

 この調子で良型の回遊魚でも回ってきてくれたらな〜なんて、ついつい欲深い事を考えてしまいましたが、今日もベイトの接岸はナッシングで、まともなサイズの回遊魚は1匹も見れず。結局それ以降はヤスを向けるような魚にも出会えず、ほぼ定刻通りにエキジットとしました。


■ 2本目 ポイントBH

 少しポイントを移動し、本日2度目の突行を開始する。

 前日の激しいジムワークの影響から、すでに両側の下腿がかなり悲鳴を上げていたが、とりあえずノルマも十分に果たせたので、2本目は比較的ラフな気持ちでエントリー。

 こちらの海もベタ凪&無風の海況だったが、やはり透明度は今ひとつ。7mの海底が薄っすらと見える程度で、それほどテンションの上がるコンディションとは言えない。

 おまけに沖合いには釣り舟が多く出ており、潜る範囲の近場であっても、小型のプレジャージャーボートの往来がやたらと目に付いた。

湾内は澄んでたんだけど…

 ちなみにこのポイントで攻めたいエリアはただ一つ。前回突行時に美味しい思いをさせてもらったキジハタマンションの次男坊(50cmクラス)の回収作業である。あの雰囲気からすれば今日もかなりの確立でキジハタが数匹居付いているはずなのだが、残念ながらこの根は最後まで攻略することができず・・・。というのも、この根に到着する直前に、キジハタマンションのほぼ真上をプレジャーボートが高速で通過して行くのが見えたんですよね。しかも数分間隔で2艘も。モーター音も軽くて直前になるまで聞こえず、この状況では命が幾つあっても足りないな・・・ってことで、チキンハート全開で磯周りへと逃げるように帰還。未練はもちろんあったものの、今日は沖方向への攻め込みは諦め、足を使って岸伝いに横方向へと行動範囲を広げることにした。

 最初に雰囲気の良い根を見付けたのは、突行開始から1時間ほどが経過した頃。幾つかの沈み根が瀬のように連なり、ある程度沖へと出た所でストンと落ちるポイント。潮当たりも良く、根はドロップしながらも壁面には深い亀裂やオーバーハングも存在し、ボトムには幾つかの大岩が散在している。水深もボトムで15m程度と、疲れた身体(とくに下半身)にも優しいエリアだった。

 この根で潜った回数は計4回。

 まだまだ時間もあったし、本当はもっともっと潜りたかったのですが・・・。

【1回目の潜行】

会心の一撃!

 根伝いに潜り、段々と落ちていく壁面の最後の窪みに身を隠す。ボトムに散在する岩周りには、イシダイの群れが15匹程度。サイズは40cm〜60cm。とりあえずヤスゴムをMAX引きで構え、ノーモーションでの寄せを開始する。50cmクラスまではちょくちょく射程に入ってくるが、最大サイズのイシダイは少し離れた所を右往左往し、なかなか寄り付こうとはせず。一旦浮上して息を整えようかとも思ったが、出来るだけ体力は温存しておきたかったので、ワンダイブで終わらせてやろうと腹を括る。1分以上経って、ようやくお目当てのイシダイが射程圏内へ。かなりスローモーションでターンしてくれたため、脳天を狙ってヤスを打ち込み、キルショットで勝負あり。しかも、頭蓋骨の一番硬い部分を貫通する完璧な手応え。それを確認するや否や浮上を開始するが、最初の強いフィンキックで激烈に左脹脛が痙攀してしまった。少しでも左脚を動かせば、引き千切れそうな程の強烈な痛みに襲われる。浮上を中止し、フィンを引っ張り筋を伸ばしてみたが治る気配は無い。已む無く右足一本での浮上を試みたが、マイナス浮力からの脱出もままならなかったため、痛みに耐え、悶絶しながら少しずつ海面を目指した。右手に握り締めたヤスゴム。全く動かないイシダイでも、串刺し状態での緊急浮上は水の抵抗が非常に大きく感じられ、かなり重たい。冷静になって考えてみれば、ヤスは一旦手離せば良かったんだけどね。海面に近付いてからは右足オンリーで必死のフィンキック。息止め限界寸前、マジで溺れそうになった1回目の潜行。獲れたイシダイは60cm。チョッキの貫通力が無く、キルショットを外していたら、結果は少し違っていたかもしれない。

一番硬い所も何のその! 今までのチョッキだったら…(汗)



【2回目の潜行】

 一旦浅場へと移動。しっかりと脚をストレッチし、十分過ぎるほどの休憩を取った後に、2回目の潜行を開始する。

 まずは慣らし程度にと先ほどの根のトップから少し下がった所にある棚の上で一休み。水深は10m弱。この調子なら何とかなりそうだな・・・と、フィンワークに気を付けながら浮上をしかけたとき、ふと横を向くと80cmクラスのヒラマサがドドーンと2匹。こちらを警戒しつつ低速で周回しているが、ギリギリのところで射程圏内までは入って来ず。いや、今思えば新品のアイシチョッキなら捕らえる事が出来た距離だったのかもしれない。でも、その時下した判断は「OUT」。浅場でのやり取りという事もあり、かなり粘ってはみたものの、最後の最後まで弄ばれ、息止め時間のリミットに・・・。

【3回目の潜行】

 ヒラマサと勝負すべく、可及的に息を整えて同じ棚の上に緊急着陸。ヤスを構えて辺りを見渡すも、すでにヒラマサの姿は此処にあらず。仕方なく諦めそのまま根を降りて行くと、根の壁面にある割れ目の入り口でホバリングするキジハタを確認。サイズは45cmクラス。斜め上からヤスを構えるオレ。キジハタはゆっくりと身体を捻り、完全な横向きに。すでに至近距離で銛先は側頭部にロックオン済み。これ以上の無いシチュエーションなのに・・・、キルショットを決めれず。瞬間的にキジハタがすぐ隣にある割れ目に入ろうと必死の抵抗を見せたため、シャフトの後端を握り、釣り竿のようにヤスを撓らせてこれに応戦。苦戦すら予想していなかったMサイズのキジハタとのやり取りだったが、微妙にせり出した岩肌の形状に阻まれ、すぐには危険ゾーンから離すことが出来ず、キジハタは大きく開いた割れ目の中へ。本来ならばフィンワークも駆使しながらこの突っ込みを軽く交わすのだが、脚部の不安に加えてキジハタのサイズが40そこそこということもあり、怠慢プレーで力任せにヤスを撓らせてキジハタを割れ目の中から引き抜いた瞬間。

まさかキジハタにヤスを折られるとは(涙)

「ペキッ!」

 と軽い異音が耳に届く。最初は何の音だか解らなかったが、出てきたキジハタの取り込みを終え、チョッキを再装着する再にヤスの異変に気が付いた。

 まさかまさかの手銛破損・・・。見ればシャフトに亀裂が入ってるではないか。今年2本目の手銛ブレイク。しかもヤスを折られた相手は40そこそこのキジハタですよ。悲しいやら、情けないやら、呆れるやら・・・。

 はぁ〜。

 ただただ、無念であります・・・。

【4回目の潜行】

 もはや魚を獲る術を失った4回目の潜行。とにかくこの根のポテンシャルだけは調べておこうと、カメラ片手に偵察気分で空潜り。ここ、ホントに雰囲気の良い沈み根なんですよね。いつまた回遊魚が回ってくるかも解らないし、大きなクエがドーンと現れても何の不思議も無い。でも、潜行中に真っ先に思ったことは「頼む!クエとか大型の回遊魚とか・・・そういうのだけは絶対出ないでくれ!」ってこと。大物に出会って、手も足も出せず悶々とするのが嫌だから。出会えば必ず後悔するだろう。こんな気持ちで潜るのって、正直全然楽しくない。とりあえずボトムまで潜り、辺りを少しだけ散策してみる。見れた魚はキジハタが1匹と、十数匹のイシダイの群れ。あとは大きめなメジナも少々。でも、やっぱり本気になっては探せなかったね。チラッと見渡して、それで終了。そしてそのまま、エキジットに・・・。


 最後はさすがに後ろ髪を引かれる思いでの強制終了となったが、一日を振り返ってみると、幾つかの自分の欠点(短所)に気付かされた有意義な一日でもあった。スケジュール的には年内にもう一度行けるかどうか。魚影的には年始もなんとかなりそうだが・・・。とりあえず折れた手銛を補修して、次なる突行に備えるとしよう。



場所 日本海某所
−突果写真−
天候
海況 風弱く 波1.0m
若潮 満潮 9:00
透明度 5m
潜水時間 9:30〜13:30
最大水深 19.8m 18.7℃)
ヤス 3.5mチョッキ銛
フィン ワープフィン
突果 イシダイ 60cmオーバー×2匹
キジハタ 45cmオーバー×2匹




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