突行記 ’08

『第12回 日本海遠征』
〜 夜を肴に 〜
突行日 2008年 8月 27〜28日

 毎年恒例、夏の孤独な単身キャンプin日本海。今年は諸事情により、特別に潜り仲間のサイモンさんとご一緒し、2日間に渉る日本海遠征を共にする事となった。

遠征のテーマ

 ・夜を肴に、楽しい時を過ごす。

突行の目標

【み〜ちん】

・食べられるサイズのクエを獲る。

・イシダイ、キジハタ、マダイ、回遊魚等、有用魚種における自己記録の更新

【サイモン】

・水深13mの克服

 ・イシダイ45cm、キジハタ35cm、マゴチ50cmのいずれかを捕獲。

 ちなみにこの遠征は、初日に向かう突行予定地以外はほぼノープラン。2日目のこと、晩飯のこと、宿泊のこと、風呂のこと…。出発前から天候・海況共に不安要素は多くあったが、行き当たりばったりでも何とかなるのが、男同士のアウトドアライフの面白いところ。

「大丈夫っしょ。」「何とかなるっしょ。」

…を合言葉に、あまり深く考えることなく、2日間の遠征をスタートさせた。


□ 1本目 ポイントUR横

 潮当たりの良い外海に面したポイント・HNは波が高かったために見送り、波の穏やかな湾内のポイント・URにて1本目の突行を開始する。

 湾内のポイントというだけで期待値は低かったが、潜ってみると意外にも魚影は濃く、開始早々から捕獲対象魚種の姿もチラホラと目に付いた。水温はここのところの時化で海水がシャッフルされたのか、先週と比べて2℃近くも低くなっており、素潜りをする上では調度良い水温に感じられる。始めのうちは大物を期待して沖合いに広がる15m以深のエリアを探索していたが、何故かこのポイントに関しては浅場の方が深場に比べて魚影が濃いことを思い出し(去年のデータより)、岸からそれほど離れていない水深10m前後のラインの根周りを重点的に探って回ることに。

幸先よく、キジハタをキルショット!

 浅場へと移って早々に、とある一つの根周りにて3匹のキジハタを一度に目撃する。サイズは35cm〜45cm程度。とりあえずそのうちの最大サイズの個体をロックオンし、至近距離から頭部へのキルショットで難無く捕獲に成功。キジハタ44.0cm。
 その後も同じ根回りで50cm前後のクエを一度だけ目撃できたが、しばらく様子を伺ってみるも、複雑な岩の隙間に逃げ込んだまま最後まで姿を現さず。。。オールスルーを決め込んでいたイシダイに関しては、水深10〜12mのエリアで40cm前後を中心に60cmクラスまでを確認することができた。

 ちなみにこのポイントではサイモンさんも、自身初となるキジハタを突くことが出来た。…が、落ち着いて良い所にヤスを撃ち込んだまでは良かったが、獲り込みに失敗し、チョッキごと近くの岩下へ逃げ込まれるという痛恨のミステイク。水深は10m程度。ここまで最大水深で10m程度は軽く潜れるサイモンさんだったが、この水深で繰り返す回収作業はかなりの体力を消耗するため、途中からはオレが引き継ぎ、手銛と魚の回収作業を行った。意外にも作業開始早々に手銛&チョッキは回収の目処が立ったものの、魚は狭い岩の隙間に入り込み、両鰓を張ったままビクとも動かない。何度か諦めかけたが、常に魚の尾側半分は見え、尚且つ手で触れることが出来るほどの状況だったため、サイモンさんにとっての初キジハタをそう簡単に諦めるのも申し訳無いな…との思いから、鰓を張って抵抗するキジハタに対し、ナイフや2本のヤスを用いながら丁寧かつ強引に引き出す作業を続ける。確実に死ぬであろうキジハタを供養する意味でも、何としてでも取り込んでやりたいところ。作業の途中から無残にもキジハタの身体がズタボロになっていき、近くに居たカサゴやイソベラがキジハタの肉片を食べ始める。もはや取り込んでいるのか、虐めているのか解らないような悲惨な光景の中、胴体と尾鰭部分が分裂しながらもなんとか回収に成功!

フードの裏側はエライ事になってます(汗)。


ふぅ…。

取り込んだキジハタ、38cm。

回収作業に掛かった時間、軽く30分以上。

取り込んだ時の達成感、プライスレス。


□ 2本目 ポイント・タカッパランド

 さらなる魚影を求め、車を30分ほど走らせ本日のメインポイント・OHへと到着したが、こちらも海況は思わしくなく、明日に楽しみを持ち越す意味でも強行突行は断念することに…。

 時計はすでに14時になろうかというところ。実は先ほどの1本目のポイントへの道程が往復約30分の山歩きを要したため、すでにこの時点で身体全体に疲労感が染み渡り、テンション的にもモチベーション的にも微妙な感じになっていた。このまま着替えて野宿の場所探しに出ることも考えたが、さすがに日本海まで来て1日1ダイブで終わるのも不完全燃焼だなということになり、風裏となる近場のポイント・タカッパランドにてこの日2本目の突行を行った。突行時間は軽めの1時間30分に設定。こちらも湾内のため波は穏やかであり、悪天候のため釣り人も居ない“良い海”だったが、透明度や魚影面では決して満足させられるような状況ではなかった。目ぼしい魚といえば、沖磯到着直後にすれ違った60cm強のヒラマサ×2匹と、水深12〜13m程度の岩下付近で50cm前後のクエを1匹目撃したくらい。いずれもほんの一瞬視界に入った程度で、満足なやり取りはさせてもらえなかった。

 結局ここではサイモンさんが35cmくらいのイシガキダイを1匹キープして、エキジット。サイズはそこそこだが、身の張り具合からも結構美味そうな個体だった。実はこのイシガキダイ、サイモンさんの愛娘の好物だったらしいのだが、この時のオレはそんな事を知る由もなかった。。。

【イシガキダイ紛失事件】

 結論から言うと、『サイモンさんがテントの中で寝ている間に、オレが勝手にイシガキダイを捌いて、ホームレスに食べさせた。』という、意味不明な事件。

 この件を全て書けば非常に長くなるので所々端折って記すが、キャンプ場の閉鎖や野宿先の公園駐車場の封鎖、悪天候等、いろいろなハプニングが折り重なって、この日はとある道の駅の空きスペースにて野宿をする事になった。

 小雨の降り続く夜空の下、道の駅の雨宿りが出来そうなスペースには初老の先客が3名で地べたに座って宴会を開いていたため、オレ達はそこから少し離れた場所にテントを設置し、酒の肴(サイモンさんの突いたキジハタ)の下拵えへと取り掛かろうとした。
 その時、その初老のうちの一人(広島出身者)が、広島ナンバーの車で登場したオレ達に好意を示し、オレ達を呼び寄せて「こっちに来て一緒に飲もうよ!」と、酒を奨めてきた。オレは疲れているうえに今から魚を下ろさなくちゃいけなかったため、心底「めんどくせぇーなぁ」と思いながらも彼らの強引な誘いを断りきれず、

「んじゃ、一杯だけっす」

と、彼等の縄張りに足を踏み入れる。ダンボール箱で出来た座布団の上に腰を下ろし、誰かが一度使っていたのではなかろうか?という痕跡の残るプラスチックの使い捨てコップを手渡されると、それに悪酔いしそうな醸造アルコールたっぷりの日本酒を並々と注がれ、

「兄さん、グィッと行け!」

と声を掛けられる。せめて使い捨てのコップくらいは綺麗な物を使わせて欲しかったが、ここまで来た以上、後には引けない。。。

 ちなみに彼らがホームレスな人達だということを知ったのは、この後の会話からである。

「あんた、どっから来た?」
「広島市内か?オレは広島の平和公園で3年間暮らしとったぞ。」

「はは…。」

 意味不明な会話が飛び交う中、時間と共に疲れた全身を血流に乗って駆け巡るアルコール。

 気付けば…というか、どういうわけか最初からサイモンさんはこの場から上手く逃れていた。

 最初は地雷の埋まった戦地へ裸足で乗り込んだ気分だったが、彼等の話を聞くと自分の知らない世界を知っていてこれが意外と面白い。どこまでがホントが冗談か解らないような犯罪チックな笑い話や、明らかに嘘と解るような馬鹿話、しんみりと語る家族の話などを聞きながら、ようやく並々注がれたプラコップ1杯の日本酒を飲み干した時、間髪居れずに新しい日本酒が勢い良く注がれていった。

「お兄さん、気に入った!もっと飲め!!」

「んっ…(汗)。」

 表面張力だ。

 これはヤバイ。

 この流れは、完全にエンドレスだ…。。。

 実はこの3時間後に広島からはしけんさんがこの道の駅に駆け付け、キジハタを肴に3人で酒を飲んで野宿をし、翌朝から一緒に潜ろうというプランになっていた。はしけんさんが来るまでに酒の肴を完成させなきゃいけないし、ましてや酒に飲まれて撃沈している場合ではない。
 
注がれた日本酒をさらに半分ほど飲んだところで、すっかり仲良く意気投合してしまったホームレス達とは半ば強引にお別れし、ほろ酔い気分で魚を捌く作業に取り掛かる。

 ちなみに先ほどまで姿を眩ませていたサイモンさんは、はしけんさんが到着するまで仮眠を取るため、テントの中へと入って行った。

 ホームレスに手渡された残りの日本酒をちびちびと飲みながら、サイモンさん突果のズタボロ状態のキジハタを手際良く捌いたオレは、キジハタの切り身を空いた皿に適当に乗せ、鮮度を保つためにそれをクーラーボックスの中へと一旦戻した。

 その時、クーラーの中に、魚が1匹横たわっているのを目撃する…。

「おっ、これはサイモンさんのイシガキか…。捌くのも楽そうだし、日本酒をご馳走になったお礼に調度良いな。」

ふぅ〜。

サイモンさん寝てるけど・・・ま、いっか。

オレのキジハタもあるけど、今からもう1匹キジハタ下ろすの面倒くせぇしな。

 テントの中でサイモンさんが寝ているのを良いことに、無断でサイモンさんのイシガキを3枚に下ろし、刺し身醤油を添えてホームレス達に振舞うことに…。

「さっきのお礼じゃけん、ま、食べてよ」

 これがホームレス達に大絶賛。

ホームレスとの懸け橋になったイシガキダイ

「ゴリゴリしていて最高じゃ!」
「美味い!こんな美味い刺し身、久しく食べてないぞ!」

 うんうん。良いリアクションだ。…と言っても、オレが突いたわけじゃないんだけどね(笑)。

 ホームレス市場ではますますみ〜ちん株が上がった。煽てられたオレも気分が良くなり、はしけんさんが来るまでの残り一時間ほどをホームレス達と飲み続けることに。

「わしは生まれて60年、あんたのような気さくで気持ちの良い青年に出会ったことが無い!あんたが広島県民だということを、わしは誇りに思うぞ!」
「おい、兄さん!明日の晩も必ず来いよ!明日はわしが島根和牛をご馳走しちゃるけん!」
「おい、タカ!この兄さん達に明日の朝はシジミ汁を飲ませてやってくれ!」

 相変わらず突拍子も無い話に加え、オヤジギャグにも満たないような超つまんねーダジャレもかなり飛び交っていたが、アルコールが手伝ってくれたお陰で全てが笑い話になっていた。

 久々つまんない事で笑えた一時。
 そんな人達と、そんな雰囲気の中で一時間。

 …で、はしけんさん、到着…。

 道の駅の駐車スペースに入ってきたはしけんさんは、車の中からしばらく不思議そうにこちらを見ていた。

 あ、そっか。予定ではオレはサイモンさんと二人っきりって設定だもんね(笑)。

 この状況をどう説明しようかな。。。

 しばらくして、車から下りて来たはしけんさん。深夜にも関わらず第一声がやたらとテンション高かったのを覚えている。

「うぃーーーーーっす!!!」

 …って感じ。ちょっと意外だったかな。

 はしけんさんにあとから聞いたんだけど、その時はどうやらオレが日本海のレジェンドな魚突き師と合流し、魚突き談義を交わしながら楽しそうに飲んでいると思ったらしい。

「えっと、この方達は?」

 と、聞かれたオレは、

「ん〜と。ここで知り合った愉快な人達です。。。」

 と、答えるしか無かった。

 オレ、根っからのホームレスは大ッ嫌いなんだけどね。世間に迷惑ばかり掛けてるようで、社会の何の役にも立ってないしさ。ま、この人達は毎日では無いにしろ、日雇いで少しでも働いているっていうから、別の目で見ることが出来たんだけど。さすがに働いてるだけあって、雰囲気もちょっと違ったし。年寄りと話をするのも好きだしね。

美味い肴と、美味い酒と、最高な雰囲気の中で…

 そんなこんなではしけんさんも無事到着したため、テントの中で仮眠中のサイモンさんを起こし、3人での宴が始まった。ビールを飲みながら、今日の海の話や明日の話、今広島素潜ラーの中で流行っている筋トレの話やいつも通り+αのエロトークで盛り上がる。どのくらい経っただろうか?ホームレスに捕まりフライングで飲んでいたオレの元に、いつの間にやら睡魔が襲ってきた。ほんと気持ち良かったね…。昼間は海で潜って、夜は外で飲む。楽しい話の中に居ながら、頭はすでにお休みモード。記憶というか、意識の片隅に、笑い声と雨の音が薄っすらと聞こえてくる。あー、オレ寝てるわ。幸せだな〜って感じ。

 んで、どうやらそのままの流れで寝ちゃったみたい。


 −2日目−

 朝8時前起床。

 なかなか良い目覚めだった。昨日のホームレスは朝早くから働きに出掛けたのか、すでに姿は見当たらない。朝はシジミ汁を飲ませてくれると約束したはずなのだが、もちろんそんな物も何処にも見当たらなかった(笑)。

 天気はあまり良くなかったが、ちょうど雨が上がっていたため、ここぞとばかりにテントや荷物を片付ける。腹も減っていたため一先ずコンビニへと向かい、軽めの朝食を取ることに。ここでふと気付いたのだが、風呂に入っていない身体に、夜の寝汗と前夜に食べたニンニク、そして酒の臭いがドッキングして、体臭が何だかホームレスっぽくなっていた。

「なんかオレ…、臭ぇ〜っす。」
「だってみ〜ちん、昨日はホームレスだったじゃん」

 いやー、マジで早く海に入りたかったっすね。


□ 1本目 ポイント・OH

 まずは昨日の2本目を時化で断念したポイント・OHへと向かった。

 磯際には若干波が目立っていたが、昨日からすれば海況はかなり改善され、魚突きをする上ではとくに支障もなく感じられる。雨もまとまって降り始めたため、釣り人も気にならず、漁船も見当たらない。

 まずまずのコンディションの中、9時45分、本日1本目の突行を開始した。

 透明度は5〜7m程度と比較的保たれていたが、海水は薄っすらと白濁しており、それに天候の悪さも手伝って、海中全体はかなり薄暗く“どんより”とした印象を受ける。
 魚影は最近の状況から比較すれば、かなり濃く感じられた。何処にでも居るわけではないが、要所要所ではイシダイも群れを生して泳いでおり、また潮通しの良い沖磯の近くや沈み根の周囲には、絶えずベイトが群れていたため、青物の登場も予感させられるほど。

 開始から15分が経過。

 すでにこの時点でキジハタは2匹確認出来ていたが、いずれもサイズが40cm未満であったため、一先ずスルーを選択。さらに沖へと向かう途中、沖の瀬の裏にある通称・ヒゲダイ岩のボトム付近(−13〜15m)にてイシダイの群れと遊んでいると、突如目の前にヒラマサの大群(45〜55cm×50匹)が押し寄せてきたため、射程に入った個体のうち、大きそうな個体を1匹キープ。ヒラマサ54.0cm。

 それからわずか10分後。

 これまで実績は全く無かったが、たまたま通り掛かったとある沖磯に何となく気を惹かれ、軽い気持ちで潜行してみることに。

 沖磯自体はそれほど大きくなく、海藻等はまったくと言って良いほど生えていない殺伐とした磯だった。海中で見るとボトム付近(-15m)は円錐状に広がっているが、海面から10mラインまではほぼ垂直に切り立ったビルのような形をしている。決して魚が好みそうな磯では無かった。

 ところがジャックナイフから数秒後、海底から数mほど上層(沖磯の際スレスレの所)を気持ち良さそうにホバリングしている1匹のキジハタをほぼ真上から目撃する。

「おっ、キジハタじゃん!サイズは…45cmくらいか?」

 そう思いながら、ヤスを構えてフィンを一蹴りすると、その後はマイナス浮力に任せてキジハタの元へ。

 キジハタの居る水深は12〜3m程度。

 根の形状上、隠れる場所も見当たらないため、ストレートに真上から距離を詰める。

 程なくして、射程圏内へ…。

 静かに左手で根の壁面を掴み、逆立ち状態をキープしたまま、ヤス先をキジハタの頭頂部へと向ける。

 …ロックオン完了。

 しばらくそのままの体勢を維持し、撃つべき時が来るのを待った。

 キジハタは真上から静かに攻めると、上方の不審者に対し、身体を捻って側頭部を見せてくる癖がある。

 それを待って、ヤスを後頭部に撃ち込んだ!


 ・・・・・・・・シュッッ…!


「よし、良い所に当たった…!」

「…!?」

 次の瞬間、キジハタの突っ込みを交わすためにシャフトを握ると、キジハタはポロリと押し棒から抜け落ちる…!!

 しかもチョッキは・・・押し棒に付いたまま・・・(涙)!!

 ヤスはたしかにキジハタの頭部を直撃したが、頭部の硬い所に打ち込んでしまったせいか、キジハタを捉えるには到らなかった様子。

「幸先良く、良型のキジハタをキープできるチャンスだったのに…」

 しかし次の瞬間、バラしを悔やんで頭を抱えるオレの視界に映ったのは、脳震盪気味に海底へと転がり落ちて行くキジハタのシルエット・・・。何が何だか良く解らずその光景を客観的に見届けていたが、ふと我に返ると、

「んおっ!?こいつ気絶してんのか??何だかよく解らないけど、ラッキー♪」

 と、ヤスを構え直し、そのまま海底に横たわるキジハタの元へ向かった。

 無駄に傷口を一つ増やしたくは無かったが、2度目は確実に貫通させ(取り込み)たいとの思いから、頭部への狙いは避け、ヤス先を頚部へ向けてフルパワーで一突き!

 ドスッッッ…!

 さすがに2度目は綺麗に貫通。手負いのキジハタに対して100%の取り込みを確信出来たため、すぐに魚を掴みに行かず、ヤスゴムを片手に握り締めたまま、魚をブラブラさせながら余裕の面持ちで海面へと向かうことに。

 ふぅ…。

 海面にて一呼吸置いた後に、ヤスゴムを、そしてヤスを引き寄せ、次いでラインを手繰り寄せてみる…。

 するとどうだ!?最初は45cm強だと思っていたキジハタが、手元に近付くにつれてどんどん大きく見えてくるではないか!

超老成魚!まさにモンスター!!

「ん?」

「おぉ!?」

「な、なんじゃこりゃ〜!!!」

 手にしたキジハタは…、驚愕の60cmオーバー!

 キジハタのデカさに驚き、酷すぎる自分の目測の狂いに驚き…、はっきり言って達成感とかそういうのは一切無かったですね。キジハタ61.0cm、3.2キロ。自己記録を5mm更新ですが、、、なんだか複雑な感じでした。

 その後は持ち前のハングリー精神が一気に抜け落ちてしまい、突行に対するモチベーションが急降下。良い魚を獲ると、どうしてもこうなってしまうんですよね。悪い気分ではないのですが…。結局その後はヤスゴムを引くこと無く、終了時間までは水中撮影等を楽しみながら、海の景色と魚影を満喫することに。

キジハタで集合写真。オレ、ヒーローです♪

 ちなみにここではサイモンさんも、キジハタへのリベンジを成功させていた。昨日の疑惑の初キジハタ捕獲から一夜明け、1本目でいきなり悪夢を払拭するキジハタ36.0cmを初捕獲。これでサイモンさんもスッキリと晴れやかな気分になれたと思うが、このキジハタリベンジはオレにとってもかなり気持ちの良い出来事だった。最後に上がって来たはしけんさんも、40cm弱のキジハタと50cm級のイシダイを腰にぶら下げていた。何故かアジのようなヤズも一緒に腰にくっ付いていたのだが、その話はここではスルーしよう(笑)。


□ 2本目 ポイント・HN

 クエ、回遊魚、大型イシダイ、マダイ、何でも狙えるのがこのポイント。
 キジハタの自己記録を更新したことにより、失ってしまったハングリー精神とモチベーションをもう一度奮い立たせ、時間的にも最後の1本というつもりで海へと向かった。

 しかし、入れ込んだ気合は豪快に空回りに終わってしまう。
 沖合いの実績の高い根回りを重点的に探索しても、イシダイはまともなサイズが泳いでおらず、魚影も全体的にかなり薄め。小魚の数もほとんど確認できず、回遊魚も回ってこない。クエやマダイの姿も皆無。はっきり言って、“終わってる海”だった。ここではサイモンさんが自身の突行目標であった『−13mの克服』を、深度アタック(バディー・み〜ちん)の末に水深14.8mまで一気に記録を伸ばせたという嬉しいニュースがあったが、言い換えればオレにとってもそれが唯一テンションの上がった出来事だったのかもしれない。


2日間を終えて

 キジハタに始まり、キジハタで終わった2日間の日本海遠征。
 天候の悪さと微妙な海況には四苦八苦させられたが、そんな負の要素すらプラスに換えれてしまうくらい、ホントに楽しい2日間だった。ホームレスとの微妙な出会いに加え、ここで書き切れないような出来事や、文章力の無さ故に表現できない事も多く、海の中でも外でもいろんな意味で本当に充実した時間を過ごす事が出来た。

 こんなにも後味の良い遠征は、今までに無かったかな。

 また来年。また来年。

 そのためなら、つまんねー日々の仕事もがんばろうかという気になれる。


場所 日本海某所
−3人の突果写真・2日目(1本目)−
天候 雨のち曇り
海況 弱風 波1.5m
中潮 満潮 10:00
透明度 5〜7m
潜水時間 10:00〜15:30
最大水深 16.3m (27.0℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン ワープフィン
突果 キジハタ 61.0cm(自己記録) 44.0cm
ヒラマサ 54.0cm




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