突行記 ’07

『第12回 日本海遠征』
〜 アクアライフとの合同突行 〜
突行日 2007年 8月 27日

アクアライフ with ヌルハチ君

 毎年恒例、今年で4年連続となった山形大学・アクアライフとの合同突行。今回はアクアライフの島根・長崎遠征メンバー《おみぞう、こうへい、チャーリー、テル、ニップル、にゃんちゅう、まな、マナティー、めぐみん、(敬称略・五十音順)》にヌルハチ君を加え、総勢11名での突行となった。


− 1本目 ポイント・MS −

 海は若干荒れていたが、臆することなくエントリーを開始する。

 まずは波打ち際に蔓延するアンドンクラゲカーテンを掻き分け、沖へ沖へと泳ぎ出ることに…。

 透明度はまずまず。潮当たりの良い磯周りでは、魚影も比較的濃く感じられた。

 しかし、この日は波が高く、加えて潮の流れも強かったため、お世辞にも快適な魚突きとは言い難い状況。

『波酔いするのも時間の問題だろう。』

 1本目はそんなテンションでの魚突きとなった。

 濃かった魚影の割には特に目ぼしい魚に出会うことなく30分近くが経過したが、沖合いの磯際にある沈み根に差し掛かったところで、根と根の間を低速で這い進む60cm前後のクエを1匹確認できた。しかし、オレの制止の願いも虚しくノンストップで泳ぎ去られ、手も足も出すことができず。クエの目撃と同時に射程に捕らえていたキジハタも、クエの動きを追っている間に見失ってしまった。

 突行開始から約1時間で…、早くも波酔いMAX......orz

 潔いエキジットも脳裏を過ったが、こんな大勢の中、一番乗り(グロッキー状態)でのエキジットはちょっとカッコ悪いよなぁ〜と思い、アクメン達から隠れるようにして沖磯に上がり、ウェットを脱いでお昼寝タイム。

「はぁ〜気分悪ぃぃ。。。」

 …。

 Zzz...

 そのまま1時間弱…爆睡…。。。

 途中でフナムシに2度ほど起こされたが、気分不良は軽快した様子。再びウェットに袖を通し、短期決戦を覚悟で2度目の海へと繰り出した。

 向かった先は、先程クエを目撃した沈み磯。

 アップダウンの激しい岩肌に、大きく緩やかな潮の流れが絶妙な雰囲気を醸し出す。

 しかし、目的の根にはクエはおろか、キジハタの姿すら見当たらなかった。

「やっぱダメかぁ〜。」

 そう思いながらもこの根回りにて何度か空潜りを繰り返しているうちに、自分の周りを泳ぐイシダイのシルエットが、やたらと多く目に付き始める。サイズは40cm級を中心に、最大サイズで50cm強。初めのうちは全く相手にしていなかったが、このポイントでイシダイの50cmオーバーは珍しく、この海況でこの機を逃せば今日一日がボウズで終わる可能性も十分考えられたため、急遽捕獲リストに加えることにした。

 呼吸を整え、潜行を開始…。

 潜行途中から40cmクラスのイシダイが2〜3匹フラフラ〜っと寄って来ているのが見えたが、それを無視して水深13mにある根のフラットな部分まで潜り、海藻のブラインドに身を隠して“寄せ”の態勢を整える。しかし、想像以上に海藻が高く生い茂っており、着底後には前方の視界が完全に塞がってしまった。。。

「ありゃ…何も見えない…(汗)」

 ところが着地地点の失敗を確信し、“一旦浮上するか…”と海藻のブラインドから顔を上げた瞬間…、1匹の大きな黒いシルエットが至近距離まで迫ってきているのが見えた!

「クチグロ!!??」

 このエリアでは今まで見たことが無いサイズのイシダイの登場だった!しかし、出会った距離があまりにも近過ぎたため、オレも反応したがそれと同時にイシダイも少し驚かせてしまった様子。驚いたイシダイはクイックターンで一気に5〜6m程距離をおき、そのまま逃走するパターン…かと思いきや、何故か再びこちらを振り向いて興味を示した!

「こいつは…獲れるな(ニヤリ)!」

 そう思うなりもう一度海藻の中に身体を完全に沈め、ゆっくりと海藻を掻き分けて根の縁にあるベストポジションを確保。

 ここなら前方の視界は良好。

 あとはヤスを構え、左手で岩肌をゴリゴリと擦るだけで…

 ・・・。

 ・・・・・・。

「ウェルカム♪

 僅かな躊躇いの後、クチグロはオレのヤス先までフラフラと近付いて来て…ビタ止まり。そして次の瞬間、横を向くタイミングに合わせてヤスを頭部に撃ち込んだ!

ドスッ…

イシダイ 62.5cm アクア計測

 撃たれた直後は一瞬脳震盪のような硬直を見せたクチグロだったが、次の瞬間には鋭く岩下への突っ込みを見せた。3.2mのゴルフシャフトを撓らせて力強く暴れるクチグロ。キルショットは外したものの、後頭部を綺麗に貫通しているため、ラインブレイクにさえ気を付ければどれだけ泳がせてもバラす心配は無かった。イシダイ62.5cm、難無く捕獲完了。

 これでとりあえず1本目の突行を終えることになった。ヌルハチ君やアクメン達も、このコンディションではかなり苦戦した様子。個人的には今年もめぐみんちゃんのアオリイカを期待していたが、ここでの際立った突果はチャーリー君のマゴチのみ。時間の経過を待っても海況の回復が見込めないため、ポイント移動を行うことになった。


− 2本目 ポイント・EM −

 西へ向かって車を走らせること20分。こちらのポイントは風裏になっており、1本目の海況からは信じられないようなベタ凪状態。テンションも一気に上がり、準備も早々に海へと飛び込んだ。

 まずは最も手前にある東の浅い根に差し掛かる。

 先日の突行にてここには愛想の良いキジハタ(43cmくらい)が居着いていることは解っていたが、この根はヌルハチ君に任せると約束していたため素通りし、さらに沖合いに位置する根を目指すことに…。

 10分後、目的の根に到着。

 根のトップは7mで、ボトムは16m。透明度は10〜12mあったため、かなり広い範囲にわたって辺りを見渡す事が出来た。この根に到着直後、海底付近の岩下を出入りするキジハタ(50cm級)を発見し、無理な体勢ながらも絶好のタイミングでヤスをヒットさせたが、貫通したはずのヤスはチョッキが効かずにそのまますっぽ抜けてしまった。もちろんキジハタは岩下に逃げ込んだまま、出てくる気配は無い。余裕がありながらも確実に頭部に撃ち込めなかったことを後悔し、幾分罪の意識を感じながら次なる獲物を探すことに。

 時間と共に濁った潮が入り始めたが、最初のミスショットから30分後に2度目のチャンスが到来。水深10m程度の浅場にて、砂地の上でホバリングを続けるキジハタを、真上からロックオンの末にヤスを一閃。若干小振りに思ったが、結果はまずまずの46.0cm。何より1匹目をバラしていただけに、取り込めたことにまずはホッと一安心。手早く鰓を抜き、ストリンガーに通して最後の根へと向かった。

 この時点で約1時間が経過。エキジット予定時刻までは残り60分。帰路の時間を考慮すれば、魚突きに費やせる時間は45分程度…。ここからのこの時間が、良くも悪くも記憶に残り続ける時間となる。

 最後の根に到着後、根の中層付近のフラットな部分にて回遊魚が周ってくるのを待っていると、つがいで仲良くホバリングをしているキジハタの姿を確認する。サイズは30cm後半と40cm前半くらい。何度か潜行と浮上を繰り返しながら、突くべきかどうか迷っていたところ、根のボトム付近を優雅に泳ぐ大きなキジハタのシルエットを発見した。

 一旦浮上し、呼吸を整えて再潜行。

キジハタ 53.5cm

 キジハタは根のオーバーハングになった岩陰(砂地)で休んでいた。キジハタという魚を真上からアプローチした場合、下手に警戒されなければゆっくりと身体を捻って綺麗に横を向いてくれるのは良くある話。今回もロックオン完了直後、セオリー通りな動きを見せるキジハタ。それを待ってから、頭部目掛けて落ち着いてヤスを撃ち込んだ。撃たれたキジハタはシャフトまで深々と貫通し、完全に勝負あり。楽に取り込めた個体は、若干細身ながらもサイズは納得の53.5cmだった。

 さらにその直後、同じ根の中層付近を縄張りにしている45cmクラスのキジハタを確認。

「一体この根には何匹のキジハタが居るんだ??」

 そんなことを考えながら再び根の中層にて回遊魚の周りを待っていると、3〜4mほど離れた根の壁面をフラフラと泳ぐ1匹のイシダイが目に付いた。サイズは30cm弱。特にそのイシダイに何があったという訳ではないが、少し気になりその後ろ姿を追いかけてみると…、イシダイは根の反対側へと周り込み、少し下って根の亀裂へと入っていった。

「へぇ〜。こんなとこにもスペースがあったのか…」


…!?…


「あ…」

「で…でっか…い」


 クエ!!!!!!!!


 なんとビックリ!イシダイが逃げ込んだ亀裂の入り口付近に、大きなクエのシルエットを確認する!若干黄色っぽく見えたため、最初は一瞬「超巨大キジハタか?」と思ったが、その違いはサイズでも明らか!それだけ大きく、とても貫禄のある魚体だった!

 小さく見積もっても80cm以上は確実。そんなクエが、今まさに自分の目の前に居る。しかも、驚くべきはすでにクエとの間合いが射程圏内であるということ。。。

 やべぇ…。落ち着け…。

 クエはオレに気付いてか、少しだけ頭を岩下のスペースへと向け、いつでも逃げ込める態勢を整えたように見えた。しかし未だ頭から尾鰭まではしっかりと確認できており、尚且つこちらに対して真横を向いているため、どこにでも撃ち込める絶好の角度であることに変わりは無い。

 よし…。

 ゆっくりとヤスを構え、ヤスゴムMAX引きでスタンバってみる…。

 …まだクエは動かない…。

 が、ここで一つ大きな問題が浮上。

 “一体このクエの何処に撃ち込むのがベストなのか??

 フルパワーで頭狙い?…貫通しないだろ。

 豪快に体のど真中?…撃った瞬間に目の前の岩下に入り込まれて終わりだな。

 側線狙って神経キルショット?…いやー、現実的には無理っしょ。

 しかし、考えてみたらキルショットを外せばどこに撃とうと確実に岩下に逃げ込まれるだろう。岩下への入り口はクエがギリギリ入る程度の大きさ。奥行きの形状や深さは未知だが、入られたら死ぬまで出て来なさそうな雰囲気は十分感じ取れる。ならばキルショットしか選ぶ術は無い。もちろん狙いは高さの位置が曖昧な脊椎・神経系ではなく、見た目で最も分かりやすい部位、脳狙いしかない!たとえキルショットを外したとしても僅かながら“脳震盪”という保険も付いているわけだし…。頭だ!頭!目の後ろだ!
(ここまで長々と書いてきたが、発見からヤスを撃ち込むまでに掛かった時間は5秒程度。)

 覚悟を決め、ゆっくりとヤス先をクエの眉間に向けて…ロックオン完了。

 次の瞬間、祈るような気持ちを込め、思いっきりヤスをぶち込んだ!!


ドッ…!!


 たしかな手応えと共に響く音。

 キルショットを外してしまったことは一瞬で解ったため、クエの引き込みに対して抵抗しようとガッチリとヤスを握りしめ…

 握り締め…


 握りし…


  ぬあぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――っっ!!



  刺さって無ぁ ――――――――――――――――――――――― い!!!


 …。

 …・・・。

 呆然としてしまいましたよ…。

 なんとヤス先はクエの側頭部に確実にヒットしたものの、硬い頭蓋骨にチョッキを弾かれてしまい、クエは鈍い擦音を立てながら猛烈な勢いで岩下の中へ…。息止めも忘れ、浮上するのも忘れ…。オレは頭を抱え、押し寄せてくる後悔と絶望感に耐えるしかなかった。

 撃つべき角度を誤ったのか?直角にチョッキが入らなかったのか?入った結果、抜け落ちたのか?撃つべきところを間違えたのか?確実に貫通させるべきだったか?その上で力と力で勝負すべきだったのか?そもそも撃つべきタイミングではなかったのか?何度か潜行と浮上を繰り返し、機が熟するまで待つべきだったか?

 自問自答を繰り返したが、答えなんて出てくることはない。この世界は全て結果論。今目の前にある現状、それが全てだからね。「タラ、レバ」を言い出せばキリがない。

 未熟だった。

 このレポートを書きながらも、目を瞑れば悔しさと共にその時の光景が鮮明に思い出せる。次の日は仕事中も「ボーッ」として、気が付けば物思いに耽っている自分が居る。未練がましくて自分でも嫌になったが、考えなければ次は無い。後悔して、考えて、そして次に繋がるはず。

 この後も何度か未練たらたらで空潜りを繰り返したが、一度驚かせてしまったクエがそう簡単に姿を見せるはずもない。ヤスを撃ってしまったのだから尚更だろう。捜索の途中、同じ根周りに居付くキジハタを3匹ほど確認したが、もはや獲る気にもなれず。結局そのまま時間切れで…無念の帰還。帰り際の砂地で寝ていたマゴチを1匹捕獲(水面から確認)し、悶々とした気分のまま納銛としました。

 エキジット後、アクアライフのみんなから突果を褒めていただいたことは素直に嬉しかったが、逃がした魚の大きさに若干凹みながら後片付けを済ませた。ちなみにヌルハチ君に「最初の根のキジハタはちゃんと獲れたか?」と聞くと、「はい♪ほんとみ〜ちんさんのお陰ですよ!」と言って、彼は自己記録となる53cmのキジハタを見せてきた。それ、オレがキミに任せたキジハタとは違うんだけど…ま、結果オーライだね(笑)。グッジョブ!!


あー。今年はクエに縁が無いなぁ!

いや、縁はあるけど活かせて無いだけか?


場所 日本海某所
−突果写真−
天候 晴れ
海況 弱風 波1.5m→1.0m
中潮 満潮 13:30
透明度 7m→10〜12m
潜水時間 9:30〜16:45
最大水深 14.9m(30.4℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン エスカペ
突果 キジハタ 53.5cm 46.0cm
マゴチ 58.5cm
イシダイ 62.5cm




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