突行記 ’07

『第3回 日本海遠征』
〜雨の中の強行突行 キジハタ3連発〜
突行日 2007年 6月 24日

 今季3回目となる日本海遠征。今回の遠征先は過去2回の遠征地とはかなり離れており、魚影や魚種が若干違ってくるため、幾分新鮮な気持ちで挑んだ遠征だった。広島市内某所にてヌルハチ君と合流し、中国山地を跨いで日本海某所へと車を走らせる。相変わらず道中の会話は低レベルかつ品が無く、盛り上がってはいたもののここに書くような内容には程遠いため、ここでは省略することにしよう。

― 1本目 ポイント・OH ―

 数日前にまとまった雨が降っており、風裏となる湾内は海面一面が薄茶色に覆われていた。しかし外海となるこのポイントは定期的な潮の流れからかそれほど濁ってはおらず、若干上層部のサーモクラインが気になる程度で、コンディション的には問題視するほどでは無かった。ちなみにヌルハチ君の情報によると、本日の島根東部の空模様は“まずまず”とのことだったが、実際の天気は雨のち大雨(時々豪雨)。ま、釣り人が少なかったからそれはそれで良かったんだけどね。

 9時15分、降りしきる雨の中、エントリーを開始する。

 透明度は6m前後。まずは沖に向かって泳ぎ出し、とある磯周りにて空潜りと寄せを繰り返してみた。…が、今日は潮の流れがあまり感じられず、魚影の方もサッパリ。沖磯到着直後に表層付近でヒラスズキ(40cm〜60cm弱)の群れを見ることができたが、確認できた有用魚種はその程度。無数のベイトが湧いていたが、青物の姿は見られない。何度か空潜りを繰り返してみたものの、ハタや青物はおろかイシダイすら現れる気配がないため、少しポイントを移動してみることに…。

 最も期待していたポイントが空振りに終わり、テンション的にはトーンダウン。大粒の雨は頭上から絶え間なく降り続き、海面から顔を上げてその光景を見る度に孤独感が湧きあがる。しかも最悪なことに、眉間にはサイナススクィーズの兆候まで出始めた…。

「日本海まで来たのに…、くそったれが…。」

 そんなこんなで気の向くまま、というよりすでに投げやりな気分でフィンを漕ぎ、とある沈み根に差し掛かったところで、急に潮の流れが速くなるのを身体で感じることができた。そしてそれと同時に魚影も若干濃くなったような気が…。。。本日初めてのイシダイを見たのはその直後だった。水面から見える程度の浅場を、50cmクラスの個体がフラフラと泳ぎ去るのを確認する。これで少しはポジティブに魚突きが出来そうだ。あとはサイナスの痛みを騙し騙しで潜り続けられるかどうか…。時間はたっぷりある。

 結果はすぐに形となって現れた。僅か2〜3回目の潜行で、根周りに群れるイシダイの魚影を確認。サイズは40cm弱〜55cmクラスまで。その群れの中で最大サイズのクチグロを寄せている最中、ふと横の根に視線を逸らすと、3mほど離れたワカメ林の茂みの中から“家政婦は見た”の市原悦子ばりにこちらを凝視している1匹の魚が目に付いた。

「キジハタ!しかもビッグサイズ!」

キジハタ(太) 50cm
 ワカメに似た体色で周囲に溶け込み、そのうえ微動だにしていなかったが、やはりその存在感は目を引き付ける何かがある。こちらに興味があるのか無いのか分らないイシダイの群れを放置し、左手一本の動きでゆっくりと近寄ってみた・・・。するとキジハタはほんの少しずつ後退りし、小さく隆起した岩の反対側(向こう側)へと周り始めた。キジハタの前で無駄に警戒心を煽るようなモーションだけは取るまいと、あえて岩の反対側へと周り終えるのを確認し、死角になったところで一気に距離を詰めてみる。それから改めてワカメの林越しにヤスを構え、ゆっくりと岩の裏の様子を横から伺ってみた。キジハタはこちらを向いてホバリング中…。いつもは邪魔をするはずの生い茂ったワカメが、今日は良い感じにブラインドになり、ヤス先は容易にキジハタへと向けられる。あとは横を向くのを待つだけだった。丸々太ったキジハタ50cm(2kg)、無事捕獲完了。

 次なる獲物もその直後。最初のキジハタの取り込みを終え、それからわずか2〜3回目の潜行で出会った40cm強のキジハタ。ジャックナイフからの潜行中に、12mの海底付近でホバリングしているキジハタのシルエットを発見。そしてそのままの流れで真上から射程圏内へ…。1匹目のキジハタの捕獲から来る余裕からか、殺気を消してスムーズにロックオン → そして楽観的なノリでヤスを放った。ズバッ!…と鋭く放たれたヤスは、キジハタを掠めることもなく明後日の方向へ…(涙)。驚いたキジハタは猛ダッシュで逃亡…のはずが…あれ?…あまり逃げない??キジハタは特に慌てる素振りも見せず、すぐ近くの岩肌へと身を寄せた。。。とりあえず一旦浮上し、呼吸を整えて再潜行。キジハタは大きな岩の前で暢気にホバリングをしていた。今度は真上からは行かず、一旦海底へと着底し、真横からのアプローチで確実にロックオン!この状況で外すとヤバイっしょ?キジハタ43cm、側頭部を完璧に捉えました。

 その後はこの潮当たりのよい一角を中心に、良型のイシダイを数多く目撃するようになる。とくに縦方向に深く開いた割れ目の中は凄かった。イシダイ、イシガキダイ、メバル、アイナメ、メジナ、タカノハダイ、ハコフグ…。魚影も魚種もピンポイントでMAX状態。割れ目の外では最大で60cmクラスの銀ワサも確認できたが、実際に獲れたのは56.5cmのクチグロが1匹。少しプレッシャーを掛けて近くの岩下に追い込み、その中で落ち着いて一突き。寄せて獲るイシダイも面白いが、この作戦も決まればなかなか気持ち良い。

モンスターヒゲダイ
 開始から2時間が経過。約束の時間が来たため、とりあえず一旦上陸することに。ヌルハチ君はすでにエキジット済みだった。「何か獲れた?」との問いに対し、オレの目の前に出したのはモンスター級のヒゲダイ!!去年ninwaruさんがこのポイントで獲った記録級のヒゲダイとほぼ同等・同格の超老成魚。もちろん顎鬚はフサフサ…。何回見ても受ける衝撃は相当なものがある…。す、凄い…。


― 2本目 ポイント・OH ―

 しばらくの雑談後、クーラーへと魚を移し、同一ポイントにて2本目の突行を開始する。すでに十分なオカズを確保しているため、ここからの狙いは大型の根魚と回遊魚。キジハタは40cmオーバーを見つければヌルハチ君に教える約束だった。ちなみにサイナスの傷みは上手い具合に騙しながら潜ることが出来ている。ジャックナイフの直後に頭を真下に向けて潜ると痛みが走るため、斜め下前方に潜る感じで顎をグィっと上げて潜水する。実際にはかなり窮屈で不格好ではあるが、これなら副鼻腔の通路が完全に閉塞することなく、先行と浮上がほぼ無痛で行える。何度もサイナススクィーズを繰り返した結果、この日に初めて掴んだコツだった。

 11時30分、2度目の突行を開始する。

 まずは先ほどの魚影の濃かった潮当たりの良い根回りにて、水深13〜15mの海底付近を平行移動しながら大型の根魚との遭遇や、不意に現れる回遊魚のシルエットに期待する。

キジハタ3連発!
 ここでも最初に現れたのはキジハタだった。サイズは軽く40cmは超えている。扁平な岩の割れ目の中で優雅にホバリングしているため、警戒心は微塵も感じられない。一旦浮上してヌルハチ君を探すが、近くには居ない様子。しばらく海面から顔を上げて潜行時に上がるフィンを探していたが、いくら待っても見えてこない。しかたなく自分で潜り、キジハタと向かい合った。割れ目はそう深くなく、追い詰められたキジハタは横を向くしかなかった。難無くストリンガーに通されたキジハタは47cmのグッドサイズ。

 その後も降雨の中での素潜りは続く…。しかし。大物縛りに変更したオレの前に、それ以上の魚は一切現れず。1本目にイシダイを獲った根回りで60cm級のクチグロにも出会ったが、射程圏内に入れながらも捕獲を断念。打ちたい衝動にも駆られたが、これ以上イシダイを獲っても…ね。しばらくしてこの場所にも見切りをつけ、さらに沖へとポイント移動を試みることに…。

 しばらく泳いでみると、メチャクチャ雰囲気の良い根に行き当たった。小岩が散在する砂地ベースの海底に、ドーンとドデカい根が張り出し、強い根魚臭を放っている。海草の生い茂った根には程よい間隔で縦に落ち込む割れ目が幾つかあり、その割れ目の入り口は狭いが、奥にはかなり良い感じで空洞が開いていた。天気が悪い上に透明度もイマイチで、海中全体は薄暗く、かなりダークな印象を受ける。それがまた大物の予感を沸々と増幅させ、オレの潜行意欲を掻き立てた。

「臭う!ここには絶対何かが居る!!!」

 そう確信し、幾つかある根の割れ目を臨戦態勢で覗いて周った。細心の注意と、冷静な判断を心掛けて…。最初に覗き込んだ割れ目で、いきなり中に蠢く巨大な黒い影を確認する。軽くメーターオーバーの…?…ドチザメかよ…。そこで諦めず、次の割れ目を静かに覗くと、ここにも大きなシルエットがドーンと…ドチザメかよ…。ちなみにドチザメはこのあと3匹居ました。

 結局この根で見れた捕獲対象魚は40cm強のキジハタ1匹だけ。ここでもヌルハチ君は見当たらなかったが、もうこれ以上は獲る気が無かったためスルーを選択。もう少し周囲を探ってみたかったが、ここで2本目のタイムアップを迎えてしまう…。結局一日を通して回遊魚にもクエにも会うことは出来なかったが、天候に恵まれない中でも熱い海と美味い肴に有り付けたことに満足し、13時10分、予定より少し早めの納銛となった。

 エキジット後、ヌルハチ君に「お前は一体どこで何してたんだ?」と問いただすと、少し離れたポイントで90cm級のクエと数回に渉り駆け引きしていたとのこと。ちなみにそこでは大型の回遊魚にも群れ&単発で遭遇していたらしい。結局何も獲れずにボウズでフィニッシュしたようだが…、ん〜。…。

 何だかちょっと羨ましく思えたことは、言うまでも無い。



場所 日本海某所
−突果写真−
天候
海況 風速2m 波1.0m
長潮 干潮 12:15
透明度 5〜6m
潜水時間 9:15〜12:15
最大水深 14.3m(21.5℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン エスカペ
突果 キジハタ 50.0cm 47.0cm 43.0cm
イシダイ 56.5cm




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