突行記 ’07

『第1回 太平洋遠征』
〜春の四国遠征〜
突行日 2007年 5月 4日

 数日前、急遽決まった年末以来となる太平洋遠征。広島からの遠征メンバーは、はしけんさん、アイシさん、シュウさん。現地では高知大学・野生生物研究会の毒魚さん、エソ君、まんたさん、ASA君と合流予定。

 早朝4時に広島を出発し、高速道路をかっ飛ばすこと4時間。現地には予定到着(集合)時刻の1時間程前に到着した。早速毒魚さんの携帯に連絡を入れてみたが、現地まではまだ1時間少々かかるとのこと。
「1時間かぁ…1時間…ん〜、・・・よし、1本行っとこう♪」
 誰が言い出すわけでもなく、1本目のフライング突行が決定した。高知大の皆さんと潜る予定のポイントから数キロ離れた別のポイントにて、1本目の突行を開始することに。


― 1本目 ポイント東の港―

 1時間勝負(時間厳守)ということもあり、久々に使うフロートの感覚や、耳管・副鼻腔の通りなど体調面のチェックがメインとなった。海の方は透明度がイマイチすっきりせず、キビナゴの群れは随所に見られたが、大物の気配は全く無い。去年の高知遠征で悔しい思いをさせられたブダイやヒブダイ達は多く確認出来たが、今日のメインターゲットはカンパチやブリなどの回遊魚。1本目からオカズ狩りをする気は無いため、ここでの魚は完全スルー。呼吸を整え、体調を確かめながら、慎重に空潜りを続けていった。

 思い起こせばこれまでの高知遠征…。体調が良い時に来れた験しが一度も無く、何となくフラストレーションの溜まる思いばかりしていた。しかし、今日は体調・耳の抜け・サイナスの通気性ともに絶好調!「今回はやってやる!絶対に良い魚を突いてやるぞぉ!」という熱い気持ちを胸に、時間通りに軽めのワンダイブを終了した。

 エキジットから約10分後、高知大の4人が1台の車(毒魚car)に鮨詰め状態で到着。毒魚さん、エソ君、まんたさんとは年末に会ったばかりだったため、懐かしさに浸ることも無く気軽に挨拶を交わす。初対面のASA君は、想像していたよりも良い男で、なかなか僕好みのキャラだった。(←※深い意味では取らないでね)フレンドリーな雰囲気でしばらく立ち話をした後、荷物を纏めて移動を開始。2台の車を東へと走らせ、今日のメインポイントへと向かった。


― 2本目 ポイント東 ―

 海はベタ凪、風弱し。漁船の密度もかなり薄い。陸から見える海はとても穏やかで、オレ達を快く受け入れてくれてるかのようだった。おまけに魚影の濃い東の岬には釣り人も居らず、今日はほぼ貸し切り状態。「去年の暮れは潮流がキツ過ぎて手も足も出せなかったが…さて、今年はどうだろう??」そんな不安と期待を募らせながら、2本目の突行を開始した。

 まずはエントリー早々に魚影の濃い東の岬を目指した。前回ほどの流れは無かったが、やはり今回も流れが強く、魚突きをするには少々厳しいコンディション。流れに逆らって泳ぐだけで、かなりの体力を消耗してしまう。おまけに流されかけた去年の恐怖感が脳裏を過ぎり、深場や沖合いを思い切って攻めることが出来ない。中途半端に時間だけが経過していく現状に見切りをつけ、ポイントを流れの緩い西側へと移し、青物狙いの突行を続けることに。

 …とは言えこのポイント、イマイチどう攻めて良いのか解らない。何処で待って、何が来るのか?水面から海底が全く見えないため、いつの間にか少しずつ流されて行き、せっかく見つけた沈み磯もすぐに見失ってしまう…。そして見失えば辺りには何も無く、だだっ広い凹凸の無い海底が広がっている。こんな所に魚が来るのか??そんな感じで、ただひたすらあてもなく空潜りを繰り返していたが、回遊魚フィーバーは何の前触れもなく始まった。

 まず現れたのはカンパチの群れ。水深12m前後の何の変化も無い海底を彷徨っていると、いきなり横方向から40〜50匹の群れが現れ、オレを中心にグルグルと周回を始めた!群れのサイズはバラバラで、全体として50cm〜70cmほど。息止めに余裕があったため、出来る限り大きな個体に狙いを定め、射程圏内に入ってくるのを待ってみた。が、50cmクラスの個体はヤス先間近まで寄ってくるものの、お目当ての一回り大きな個体は群れの外側で周回し、良いタイミングで射程には入って来ない。あえてここでは妥協をせず、一旦浮上を選択し、息を整えて再び海底を目指す。カンパチの群れはどこかへ行ってしまっていたが、潜ってしばらくすると再び寄って来て周回を始めた。「何なんだ?こいつらのこの寄り方は??」カンパチの凄まじい好奇心に驚くと同時に、こんな状況なら小さい固体はいつでも獲れるであろうことを確信。もはや狙いは群れの外側を周る70cmクラスのみ。…が、結果的には2度目、3度目のチャンスもモノにする事ができず、しばらく続いたカンパチタイムは何の成果も得られず終了の時を迎えてしまった。しかしこの後、さらに凄い光景を目にすることに…。大型のブリの群れの登場だ。

 カンパチタイム終了から約15分後。「やっぱ小さい固体でもまずは1匹獲っておくべきだったかな?」と後悔の念が脳裏を過ぎり始めたとき、ブリの大群にばったりと遭遇する。こちらも同じく水深は12m前後の海底での顔合わせ。沈み根を求めて海底付近を水平潜行していた途中だったので、息止め時間にあまり余裕が無かった。ブリの大群はほぼ真正面から悠然と現れ、オレを取り囲むように周回を始める。サイズは70〜90cmクラスまで。数にしておよそ50匹程度。こんな大型回遊魚の群れは未だかつて見たことが無く、一言で言えば…圧巻だった。カンパチより若干大きめの半径で回遊するブリに対し、ここでも妥協せずに大型のブリを狙おうとしたが、やはり狙いの個体は射程には入って来ず、苦しさの限界を迎えて海面へと浮上する。興奮を抑えながら海面にて息を整えていると…なんとブリの群れがオレに付いて水面付近まで上がってきていた!ブリの群れが位置する水深は約2m程度。水面からでも十分狙える距離だった。これ以上無いシチュエーション。周回を止め、一塊になってゆっくりと泳いでいるブリに対し、息を整えながらその群れへとヤスを向け、じわりと距離を詰めてみる。するとブリの群れはゆっくりと動き出し、オレから少しずつ離れ始めた。オレが追いかけるのと同じスピードで…。そして、次第にブリは視界から姿を消してしまった…。

 ここからはかなりドライな時間帯が続くことになる。青物の期待値はMAXで身構えているにも関わらず、潜っても潜っても一向に顔を見せないカンパチの群れ。他に獲るべく魚も見当たらず、ただただ虚しい空潜りを続けること2時間弱。空腹感と共に疲労も溜まってきたため、一旦上陸し、昼休憩をとることに。

 海から上がると、オレ以外は全員エキジット済みで、すでに昼食も終わり休養をとっていた。どうやらオレが一人、かなり遅い帰還となっていたらしい。す…すみません。そしてオレが上がるなりみんなは3本目に向かうと言うので、オレも水分だけ補給し、休憩ナッシングで3本目の突行と向かった。


 昼過ぎにしてすでに2ダイブ(1時間+3時間)を消化。インターバルは5分程度。かなり過酷な3本目の魚突きが幕を開ける。


― 3本目 ポイント東 ―

 いろいろとレポートしたいところだが、この3本目は心身ともに疲れきった3本目となる。2本目で回遊魚に出会ったポイントを中心に、時間一杯まで空潜りを繰り返してはみたものの、回遊魚の群れには1度も遭遇することが出来ず…。。。腹も減ってるし、脚力も肺もかなり疲れてきた。ウェイトが腰に重くのしかかり、腰痛まで感じ始めた3本目。途中からはネガティブな言葉ばかりが頭の中を駆け巡る「おれは何故、こんなにがんばってるんだろう?どうしてここまでしなくちゃいけないんだろう?」その答えが解らないまま、そして何も得ることが出来ないまま、陸へ向かってフィンを漕ぐ。

「これで今日は終わったかな…」と、思いながら…。

 海から上がった直後、休憩ポイントまで歩く途中にアイシさんと遭遇した。アイシさんのスカリには50cm半ばのヒレカンが2匹ぶら下がっている。うっ…。この状況はマジでヤバイ。帰りの車で何を言われるか解らない。何より自分が一旦はスルーしてしまった魚で、2007年初場所の勝利を浚われるのがどうしても納得がいかない!早くもアイシさんの口からは「あれ?み〜ちんさん、魚はどうしたの?」と容赦の無い毒が吹き始めている。…とはいえもう3本目を消化し、みんなの顔にも疲労の色が。。。そしてこの後はGWの渋滞が予想される中を広島まで帰らなくちゃいけないし…。

 そんな時、一人メラメラと闘志を燃やしている男を発見!!

 …は、はしけんさん♪

「じゃ、4本目行きますか♪」

 …と、笑いながら冗談っぽく声を掛けてみると…

「ん?わしは…別に行っても良いよー。」

 …と控えめながらも、その表情はかなり嬉しそう(笑)。

 という訳で、泣きの4本目決定!時間的にも正真正銘のラストダイブです。


― 4本目 ポイント東 ―

 半ば呆れ気味に終了宣言をした高知大の面々に「申し訳ないっす!」と一言だけ言い残し、本日最後の海へと向かった。キビナゴの群れや他の魚の魚影などは朝からほとんど変わらない。同じポイントで粘っていれば必ずチャンスはやってくることを信じ、2本目にカンパチと遭遇した付近のポイントにて執拗に空潜りを繰り返す。途中、10匹程度の大型コロダイの群れに遭遇したが、迷った挙句にヤスは封印したまま。かなりの誘惑に思わず手を出しそうになったが「今日はとにかく回遊魚オンリー!!」と邪念を捨て、逃げないコロダイを横目に辺りを見渡す。そんな潜行を繰り返すこと約30分。待ちに待った数時間ぶりのカンパチタイムがやって来た。

 流れに逆らいながら水面移動していると、ふと後方が気になり目を向けてみる。すると、偶然にもオレの後方(水深5m前後)をゆっくりと群れて泳ぐ銀白のシルエットを、薄っすらとだが確認することができた!待ってましたとばかりに、カンパチの群れる水深まで潜行を開始。ジャックナイフ直後にカンパチの群れは一気に散ってしまったが、それからわずか数秒後、強い好奇心を剥き出しにして再びカンパチの群れが登場!!

「カモーン!カンパチ○コ!!」


初 カンパチ 64.5cm!
 群れが登場するやヤスを構えて臨戦体勢。欲を出さずにどんなサイズでも突いてやろうと思っていたが、今回はどれも同じ様なサイズだったため、変に迷う必要は無かった。1匹目に際どいタイミングで射程に入った個体を無理せずスルーし、その直後に射程圏内を無警戒に横切ろうとした2匹目の個体に照準を合わせた。動きに合わせて頚部にロックオン!そして無意識にヤスを放った!!
 
 KILL SHOT!!


 久々に決まったキルショットの末、カンパチはピクリとも動かずオレの手元にやって来た!長い一日の最後の最後に決まった会心の一撃。直ぐに群れが散ってしまったため、確変には突入せず単発で終了したが、1匹獲れただけでも十分だ。この勢いで2匹目を探すのも…何か違う。制限時間まではまだ余裕はあったが、気力が尽きてしまったために潔く突行終了を選択。

 春の高知遠征は充実感と疲労感たっぷりの中、幕を下ろしました。

※ちなみに…
 エキジッから数分後、アイシさんとシュウさんが坊主でフィニッシュするのを確認。はしけんさんは1時間近く遅れて50cm強のヒレカンを2匹。ってことは…おほほほ…(笑)!帰りの車内では勝者の僕が武勇伝を語り続けようと思っていましたが、僕も含めてみんなが疲労困憊で…とてもそんな気分じゃなかったです。。。




場所 太平洋某所
−突果写真−
天候 晴れ
海況 風速3m 波1.0〜1.5m
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透明度 7〜8m
潜水時間 9:00〜16:45
最大水深 14.3m(20.2℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン エスカペ
突果 カンパチ 64.5cm (自己記録)




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