釣行記


『ツーリングダイブ』

突行日 2006.10.11


 食欲の秋。素潜りの秋。そしてツーリングの秋。我が家の厳しい経済上の理由にて突行専用車・スパシオ号を手離してしまったため、今後の単独突行はバイクで通わなければならなくなった。もちろん県外への長距離遠征もその例外ではない。ツーリングを兼ねた突行となれば肉体的にも精神的にも疲労の度合いは計り知れないだろう。それでも海へ行きたいというのであれば、寒かろうが辛かろうが勢いで乗り切るより他に無い。

 こうなると遠征先の選択も今まで以上に慎重になる。数時間かけて現地へ行き、「海況が悪くて潜れませんでしたぁ♪」ではマジで笑えない。確実に潜れる山口(瀬戸内側)で良型のブリを狙うべきか、少しリスクを犯して透明度の高い島根で潜るか・・・。距離は山口。魚影は島根。海況は山口。環境は島根。青物のサイズは山口。魚種の豊富さは島根。迷いに迷った結果、出した答えは島根県東部。やはりベストシーズンの日本海を黙って見過ごすわけにはいかなかった。

 朝5時過ぎ、バイクのメットインと後部座席の上に荷物を詰め込み、背中にヤスを担いで広島を後にする。長い旅の始まりだ。夜明け前の国道を快調に飛ばすビッグスクーター。ビジュアル的には少々歪だが、意外にも安定感は保たれているため乗り心地は悪くない。ところが、30分ほど走らせると身体が徐々に冷えていき、次第に震えが止まらなくなっていった・・・。「うぅ・・・寒い。」いつもよりは幾分厚着をしてきたつもりだったが、上下セットで1000円のウインドブレーカーで風を凌げるほど、早朝・山間部のツーリングは甘くなかったようだ。特に中国山地に入ってからはマジでキツかった。免許取り立てのオレにはツーリングに関する経験や知識が全く無いため、ある程度のミスは覚悟の上だったけど・・・。

 2時間ほど走ったところで道の駅に立ち寄り、束の間の朝食タイム。チョココロネとビスコをゲータレードで流し込み、ここからの道程に体力を整える。すでに太陽が昇り始めたため、気温の上昇と共に少しずつ走り易くなってきた。ここからはノンストップでポイントまで直行。片道の走行距離は約180キロ、所要時間は3時間強だった。


 ■ 1本目(雷ポイント)

 荷物をバイクから下ろし、肩に担いで波打ち際へ。まずは岩の上で横になり、少し疲れを取ってからゆっくりと準備を始めることにした。

 9時30分、いつもより幾分たるんだテンションでエントリーを開始する。

 海はベタ凪でウネリも無い。透明度は水深8mの海底がギリギリ見える程度。思ったよりも全然良い海況に、まずはほっと一安心。そのまま沖へと泳ぎ出て、大きく連なった瀬を越えた辺りから潜行を繰り返す。

 魚影はこの時期、このポイントにしては若干薄く感じられた。潮当たりの良い根周りにて何度と無く空潜りを繰り返したが、辺りを見渡してみても捕獲対象にならないような小アジや小メジナ、スズメダイしか目立たない。イシダイやイシガキダイはゴリ寄せに対してまずまずの反応を示したが、射程まで入るイシダイは40cmクラスがほとんど。今まで何度かクエを目撃した実績のある沈み岩にも足を運んでみたが、クエやキジハタのシルエットは見当たらず。

 1時間程探索したところでポイントをさらに沖合いへと移し、漁船が通らない事を願いながら少し深場の根回りを探ってみる事にした。メインターゲットはヒラマサ。沈み根や磯周りでは局所的にかなりの数の小アジが群れていたため、青物が回ってくるのはおそらく時間の問題だろうと思っていた。しかし、期待は大きく空回り。いくら待っても小アジの泳ぎに緊張感は見られず、青物は単発的に2度ほど現れたのみ。いずれも射程にすら入れなかった。

 すでに突行開始から2時間が経過。待てども一向に現れない青物の姿に、集中力も若干途切れ気味。ここで気分転換にターゲットをイシダイへと変更し、同じ根回りのボトム付近にて大型のイシダイを待つことに・・・。

 水深7〜8mのフラットな根のトップから斜めに下り、海底付近の水深は13〜15m。そこから数m離れたところに高さ5m程の小さな沈み磯があり、その磯を取り囲むようにしてメジナの大群と数匹のイシダイが一緒になって戯れていた。イシダイのサイズは40cmクラスを中心に、最大で55cm前後。ゴリ寄せに対しては予想通りの好反応を示したが、メジナの不必要な動きに翻弄されてしまい、射程圏内まで寄って来るイシダイはオール50cm未満。ここでサイズの妥協はせず、一旦浮上を選択し、呼吸を整えて再び潜行・・・。何度かこれを繰り返すうち、磯周りのイシダイの魚影は徐々に濃くなっていた。群れの中には50cmオーバーの銀ワサも泳いでいる。「やっぱイシダイといえば銀ワサでしょ!」と、狙いを銀ワサに絞り、イシダイグループに向かって必死にゴリ寄せをしていると、群れの中からでは無く、全く別の方向からスーッと寄ってくる1匹の大きなイシダイが視界に入った。そいつは向かって右方向からオレが身を隠している根を横切るように低速で近寄って来る・・・。全く警戒する素振りも無く、その姿を見た瞬間に「こいつは獲れる!」と確信できた。手前にある海草のブラインドによりイシダイの全貌は見え難いが、サイズはおそらく60cmクラスのクチグロ。予測進路はオレの目の前2m圏内。通過予想時刻は・・・6〜7秒後。
 確実なクチグロ60か・・・少し離れた銀ワサ50強か・・・。ほんの少し迷ったが、ここはやはり確実性を求めてクチグロ60を選択。そして数秒後、予定通りクチグロは目の前に・・・。


ドスッ・・・。


イシダイ 69cm (自己記録)
 どちらかといえば外す方が難しいシチュエーション。寄せるだけ寄せた後はヤスを放つだけだった。力を込めて打ち込んだヤス先は胸鰭付近から入り、反対側の鰓に向かって綺麗に貫通!キルショットを外したため、突いた直後から横へ下へとガンガン突っ込まれたが、落ち着いてラインを手繰り寄せ、抱きかかえながら両鰓元をガッチリとキープ!浮上しながら改めて見ると・・・、やはりデカい!そして長い。手尺で計ると70cm近くありそうだ。自己記録は間違い無い!

 狙いの青物は獲れなかったが、ここでとりあえず一旦上陸してメジャーを当ててみる事に・・・。気になるサイズは・・・69cm!あと1cmで70cmの大台突入という事もあり、何度も何度も測り直したが、結果は変わらず69cm。尾鰭を伸ばせば70cmを楽に超えるが、やはり今まで通りの測り方でなければ意味が無い。大幅な記録更新と共に、次なる記録も見えてきた。あえて1cm足りなかった事が、今の自分にとってはプラスに作用するだろう。

 孤独なセルフタイマーでの撮影会を終え、クーラーバッグに魚を詰め込み次なるポイントへ。同一ポイントにて70cm狙いで潜っていても良かったが、あくまで今日のメインターゲットは回遊魚。ウェットを着たままヤスを担ぎ、バイクに跨り一路ポイント・OHを目指す事にした。

※ビッグスクーターにウェットスーツ&ヤスという装備で乗り込むと、さすがに目立つね。カーブミラーに映る自分が、さながら出来そこないの特撮ヒーローのようにも見えた。すれ違う人達の振り返る姿に気付く度、どんどん吹っ切れていく自分が居る。

 そんな感じで海沿いの山道を30分程度のツーリング。ポイント・OHへは12時過ぎに到着した。こちらの海も瀬戸内レベルのベタ凪。早速荷物を荷台から下ろし、腹ごしらえを済ませて2本目の突行を開始する。


 ■ 2本目(ポイント・OH)

Wクチグロ 69&61cm
 ここでは釣り人も多く、漁師の存在も気になったため、人気の少ない磯周りにて空潜りを繰り返した。小アジの群れは頻繁に回っているが、青物のシルエットまでは確認できず。少し潜れば4〜5匹のイシダイの群れが定期的にやって来るが、さすがに自己記録を超えるようなヤツは見えて来ない。1時間が経過しても突果は全く伸びず・・・。イシダイは1本目に獲った1匹だけで十分と思っていたが、寄せてもいないのに執拗に迫ってくるイシダイの誘惑に負けてしまい、群れのリーダー格を目一杯寄せてキルショット。クチグロ61cm。

今季初のヒラマサ
 そのイシダイをストリンガーに通した数分後、ようやくヒラマサの姿が見え隠れし始めた。サイズはいずれも60cm前後。2〜5匹の小編隊で、警戒しながらゆっくりと小魚を追っている。なかなか射程までは入って来なかったが、何度目かの顔合わせでタイミング良くヤスを撃ち込む事ができた。チョッキが刺さったのは体のど真中。結果的にはしっかりと背骨に引っ掛かっていたため楽勝だったが、取り込むまではかなり慎重になった。海面に到着後も、焦らずゴムのテンションで弱らせる。最後は自分から潜って近付き、魚を掴んで勝負あり。サイズは58.5cmと小振りだったが、とりあえず狙っていた魚が獲れて一安心。

 それから約10分後、同じ根のボトムにて徘徊中のキジハタを確認。ヤスを向けても逃げる素振りは無く、『ロックオン→あっち向いてホイ→捕獲』というお決まりのパターンで難無く取り込み完了。サイズは40.5cmとまずまず。

 気付けば時刻は15時を過ぎようとしていた。時間的にはこれから青物の魚影が濃くなるように思われたが、帰りが遅くなると山道が冷え込むのであまりダラダラと潜るわけにはいかず・・・。若干心残りではありましたが、人生初のツーリング突行は少し早めの納銛と致しました。

 ― 突行を終えて ―

 帰りもやはり寒かった。ガソリンスタンドに手袋を忘れてしまい、マフラー代わりに首に巻いていたタオルも運転中に風で吹き飛んでしまった。時間の経過と共に気温はどんどん下がるため、帰りはノンストップで広島へ。途中で実家へ立ち寄ったため、本突行での全走行距離は約430キロ。時間的には車と大して変わらないが、身体中に染み渡る疲労度はマジで半端じゃなかった。突行後2〜3日は「もう2度と島根(東部)にバイクでは行くことはない!」と思ってたね。
 でも疲れが癒えた今は「たまにはアリかな〜?」って思ってます(笑)。
 ホント馬鹿だよね・・・。


場所 島根県 某所
本日の突果
天候 晴れ
海況 波高 1.0m 弱風
中潮 干潮 12:00
透明度 6〜8m
潜水時間 9:30〜14:45
最大水深 16.5m(22.2℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン エスカペ
突果 イシダイ 69cm (自己記録) 61cm
ヒラマサ 58.5cm
キジハタ 40.5cm
本日の食卓
久しぶりに魚を腹一杯食べる事が出来た。
キジハタ、ヒラマサは良い意味で想像通りの味だったが、69cmのイシダイは大味で、脂のノリがイマイチ・・・。やはり食べる事を目的とするならば、イシダイは45〜50cm前後が最も美味しく感じられます。
キジハタのタタキはもちろん皮を付けたまま。程好く火を通すとあっさりとした甘みに旨味が増し、ちょっぴり贅沢な気分が味わえます。
キジハタ鍋 キジハタのタタキ




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