釣行記


『クエには勝てず・・・』

突行日 2006.10.22


 今年の新年会で「2006年はみ〜ちん相手に全勝します!」と抱負を述べたアイシさん。ちなみにそれを聞いたオレは「そんなの無理に決まってんじゃん(笑)♪」と、軽く笑って流した。またいつものジョーク言ってるよ・・・って感じで。実際にオレは日本海の開幕戦にて銀ワサ60cmを獲り、アイシさんの年内全勝の野望を早くから打ち砕いた。

 ところが・・・だ。2戦目以降、アイシさんとの突行では何故か不調が続き、やられっぱなしの日々が続いている。60cm未満のイシダイに関しては負けても特に何とも思わなかったが、7月に島根でマダイを獲った辺りからアイシさんに対し、“妙な勢いと若干の苦手意識”を感じるようになった。そして前々回(山口遠征時)の、あのブリですよ・・・。あれはマジで悔しかった・・・。初めて人の突果を見て羨ましさと悔しさで凹みかけたね。あのイヤラしい登場シーンは今でもオレの脳裏にはっきりと・・・。

 とにかくアイシさんが勝利を収めると、帰りの車内トークがアイシカラー一色に染まってしまう。それがオレにとっては何よりの罰ゲームなんです(笑)。あの男にこれ以上良い思いをさせるわけにはいかない!そんな不純な思いで乗り込んだ今回の島根遠征。合同突行者には久々のご一緒となるninwaruさんとシュウさんを加え、ベストシーズンの日本海にて熱いバトルを繰り広げてきました。

 ■ 1本目(雷ポイント)

 朝マヅメの時間帯を攻めるとの事で、1本目には今年最も青物の回りが良かった雷ポイントを選択。ベタ凪の海を目前に、かなり高いモチベーションを持って突行を開始したが、あまりに薄過ぎる魚影を前にテンションはガタ落ち。まるで冬の海に潜っているかのような海中風景だった。1時間程潜って確認できたイシダイはたったの1匹。青物はゼロ。もちろんクエやキジハタ等もおらず、挙句の果てには漁師が船で近付いてきて「ここで潜るのはダメだ」とクレームを・・・。「貝は獲ってないっすよ〜」と言ったが、ウェットスーツを着て潜ること自体がいけないらしい。馬鹿げたクレームだと思ったが、この貧相な魚影を前にしては自己主張をする気にもなれず、二つ返事で潔く退散。結局ここでは誰も良い魚を見なかったようだ。

 ■ 2本目(ポイント・OH)

 ここも潮当たりの良い沈み根付近では回遊魚からイシダイ、キジハタに至るまでかなりの魚影が期待できる好ポイント。湾内のエントリーポイントから沖へ向かって泳ぎ出し、小アジが群れる根周りにて、ヒラマサの登場を待つことに・・・。

 開始から僅か10分程で、数匹のヒラマサが偵察にやって来た。サイズは60〜70cmクラス。こちらの動きに警戒してしまったヒラマサはなかなか寄り付かないが、時間が経ち、初めて顔を見せる個体は真正面から至近距離までガンガン寄って来る。

 最初に射程に入ったのは70cm弱のヒラマサ。目一杯寄せ、横を向いたところを落ち着いてど真ん中にクリーンヒット!ヤスは押し棒を越えてシャフトまで深々と貫通し、撃たれたヒラマサはピクピクと身体を痙攣させている。幸先の良いスタートだ・・・と、ここで油断して雑な取り込みに入ってしまうのがオレの悪い癖。浮上中にてキルショットを確信し、魚を掴まずヤスを釣り竿のように撓らせながらヒラマサを海面へと運んでいると、急にヒラマサが暴れ始め、ヤスから魚体がスポッと抜けてしまった。「やばい!!」と思った時にはもう後の祭り。逃げて行った方向に全力で追いかけたものの、傷付いたヒラマサを再び探し出すことは出来ず・・・。反省ですね・・・。

 「怠慢プレーはもう2度としません!」と自分に言い聞かせ、再びヒラマサを待ち続けることに。時間が良かったのか、潮が良かったのか、2度目のチャンスも意外と早くから訪れた。こちらもバラした1匹目とほとんど同じシチュエーション。なかなか射程圏内に入らない警戒中のヒラマサを目で追っていると、別方向から好奇心旺盛なヒラマサが至近距離までグングンと・・・。焦らず横を向くまで待ち、胸鰭直上にストライクショット!そしてヤスはシャフトまで貫通!撃たれたヒラマサは小刻みに身体を動かせて抵抗したが、直ぐにシャフトの両端を掴み、串刺し状態のままで海面へ・・・。さすがにこれならバラす心配は無い。ヒラマサ63.5cm、地味に自己記録更新に成功。
ヒラマサ 60cm級×2本
 続いてそれから10分後、今度は回ってきた警戒中のヒラマサに寄って行き、ギリギリ射程に入った個体を遠目から一突き!貫通はしなかったが脊椎に上手く引っ掛かり、ゴムのテンションを効かせながら何とか回収完了。ヒラマサ64cm、さらに地味に自己記録を更新。

 これが青物の“時合い”というヤツなのか?潜ればかなりの確立でヒラマサが回ってきた。2本目を取り込んでからは若干遭遇頻度が下がってきたが、それでも常に何かを期待させられる雰囲気だった。この日MAXのヒラマサの群れに会ったのは、それからわずか数分後・・・。

 超特急で泳ぎ去る小アジの大群を確認し、水深6〜7mの根のトップで張り込む事に。案の定、やって来たのは70匹〜100匹程度のヒラマサの群れ。その群れはオレに気付くなり小アジを追うのを止め、根から少し離れた中層にて右へ左へと周回を始めた・・・。オレは出来るだけ警戒されないように根に張り付き、少しずつヒラマサとの距離を縮めてチャンスを伺う。射程圏内まではあと1m程。大きく広がったヒラマサカーテンに向かってヤスを構え、軌道を外れた個体を狙ってやろうと集中力を高めている時だった。

 
「ブゥン・・・」

 んんっ!!??

 何故か目の前のヒラマサカーテンが一瞬にして遠くに消え去ってしまった・・・。意味不明な行動パターン。基本的に青物は群れで現れると警戒心が薄いことが多く、その上あの慎重なアプローチであれ程までに警戒される理由が見当たらない。「おかしいなぁ・・・」と思いながら何気に後ろを振り返ると・・・・・・、なんとヒラマサに丸見えの状態でアイシさんが中層に浮いてるではありませんか!!


「アイシさん!も〜何やってんすかぁ(笑)!邪魔しないで下さいよ!」

「いや〜ヒラマサがたくさん群れてたからワシも突こうかの〜と思って(笑)。」

「・・・ったく。ん?で、な、何すか?その腰に下げてる魚・・・うわっ、クエじゃないっすか!!しかもデケぇ!」

「いや〜会心だったよ。」

「くっ・・・(号泣)」



 アイシさんのクエは後の検寸で70cmジャスト。しかしその魚体は丸々と太っており、一見では75cmを超えていそうに見えた。60cmクラスのヒラマサ2本で勝利を納めれるとは思っていなかったが、さすがにクエを見せられては言葉も出ない。

クエには勝てません・・・
 「魚が重たいけん、オレ先に上がるわ」と、言い放ったアイシさんの後ろ姿を見て、徐々に失われていくオレの闘争心。「今日も負けか・・・。」クエなんて狙って獲れる魚ではないし、そして何より無性に悔しかったのでクエやキジハタ等根魚の捜索はその後も一切せず、再びヒラマサの到来を待つことに・・・。腰に自己記録のヒラマサを2本下げながら、悶々としたテンションでの魚突き。一発逆転で超特大のヒラマサが回ってくることを期待したが、その後は単発で60cmクラスが2度現れたのみ。空腹に連れて集中力が切れ始めたため、オレも一先ず休憩を取ることにした。

 海から上がった直後の波打ち際にて、家族連れのギャラリーがオレのヒラマサに気付き、喝采を浴びせてくれた。「凄い!」「大きいね!」「何ていう魚?」「潜ってそんな魚が突けるの?」

 持て囃されてそれなりに嬉しかったが、これは紛れも無く敗者のエキジット・・・。家族連れと別れた直後、丘の上に居たアイシさんが遠くからオレに辛辣な一言・・・。


「よぅ!ヒーロー!」


 はい、絶対許しません(涙)!!


 シュウさんはオカズをきっちりキープ。ninwaruさんは全く良い魚が見れなかったらしく、ボウズで上がって来た。それから軽く昼食を取りながら情報交換し、12時45分、本日最後の海へと向う。

 ■ 3本目(ポイント・OH)

 3本目はエントリー直後に意外な大一番が待っていた。
 エントリー開始から数十秒後、岩の上に生い茂った海藻の中にて、微かに動くオレンジ色の物体を確認する。水深にして2m前後(岩の高さを考えると2mより確実に浅かった)。最初は目の錯覚だと思いスルーしかけたが、少し気になって目を凝らしてみると魚である事が判明。真っ先に思い浮かんだのはタカノハダイだったが、近付いて見るとやけに太い・・・!?



ん???デブキジハタァ〜!!!!



 まさかこんなエントリー直後の超浅場でこのサイズのキジハタに会えるとは・・・!ちょっと信じられない光景だったが、そんな事を悠長に考えている暇は無い。ゆっくりと静かにヤスを構え、続いてゴムに手をかける。さすがのキジハタもこの距離では好奇心よりも警戒心の方が勝っていた様子で、オレがヤスゴムを引くと同時に少しずつ前方へと泳ぎだし、低速ながらも逃げの態勢へと入った。

 こんな浅場での駆け引きだったが、最後まで焦らず対処できたのが良い結果に繋がったのだろう。泳ぎ始めたキジハタをあえて追わず、まずは数秒間かけて6〜7m泳がせた。その間オレは微動だにせず、キジハタの動きは目で追うのみ。やがて海底には高さ50cm程の岩が隆起し始め、向こうから一旦死角に入ったところで尾行を開始する。透明度をフルに使ってキジハタとの間合いを取っていたため、スピードアップされたり、深みに入られると作戦は失敗に終わってしまう。とにかく「岩下へ入れ・・・岩下に入れ・・・」と願いながら、音を立てないようにフィンを漕ぎ続けた。願いが通じたのは尾行開始から10秒近くが経ってから。(※体感ではもの凄く長く、1〜2分程度に感じた。)

 泳ぐのを止めたキジハタは、とある大きな岩の下に姿を隠した。水深は4〜5m程度。岩の周りを一周し、その岩の形状と抜け穴が無い事を確認。それから息を整えて潜行を開始する。
 岩下のスペースは非常に狭く、キジハタの尾鰭付近は見えるが頭部は全く見えない。かなり撃ち辛い状況に戸惑っていると、キジハタはそのまま岩下の奥へと入って行き、モゾモゾと体を反転させて今度は顔だけ覗かせてきた。もちろんヤスは常に岩下のキジハタへと向けられている。しばらく向き合ったままヤスを撃つタイミングを計っていたが、キジハタは一向に横を向く気配が無い。向き合った魚を真正面から撃つことは、刺さり難さからしてもかなりナンセンスだと思ったが・・・ここまで警戒されてる以上、何が確実で何が危険かは全てが結果論のようにも思えた。何度か空潜りを繰り返し、チャンスを伺ううちに見失ってしまうという最悪の結末も十分に考えられる。

「ここは攻めの魚突きで!!」


キジハタ 52cm (自己記録)
 とりあえず照準を口元に合わせ、横を向く意思が無い事を確認して強引にヤスを撃ち込んだ!そしてヒットすると同時にシャフトを握り、手応えを感じた直後、手早く岩下からキジハタを引っ張り出すことに成功!ラインを手繰り寄せ、巻き上がる砂煙の中から出て来たキジハタの両鰓をガッチリとキープ。ちなみにヤスが刺さったポイントは上顎と歯の隙間・・・。ん〜結果オーライにはなりましたが、やはり真正面からは突くべきじゃないっすね(笑)。

 キジハタのエラを抜き、近くを通り掛かった(まだキジハタを獲ったことの無い)アイシさんに軽く自慢して、再び沖合いの沈み根へと向かう。

 全体的な魚影としては2本目に比べて若干薄くなった印象があった。シュウさんへのお土産用に50cmオーバーのイシダイを待ち続けたが、イシダイのシルエットはほとんど確認することが出来ず・・・。射程に入ってくるのは最大でも40cm程度。小アジの周りもイマイチで、ヒラマサの群れに至っては一度も回ってこなかった。

 1時間程度でポイントを東へとずらし、再びイシダイ狙いで空潜りを繰り返す。水深13〜4mの根の中腹に身を隠し、海底付近(20m弱)に戯れるイシダイを寄せ上げるという少し手抜きな作戦で・・・。さすがに3本目ともなると20m近く潜るのはキツイですからね。
 そんな感じでここでも一時間ほど粘ってみたが、良い結果は付いて来ず。40cmまでのイシダイはかなりの勢いで射程まで入って来るものの、良型の個体はスレまくりで寄る気配が感じられない。唯一のチャンスは突行終了間際。偶然寄って来た60cmクラスのヒラマサに対し、至近距離から確実にヒットさせるも、チョッキが効かずにすっぽ抜け。ズバッと突いて、ズボッと抜けて・・・。最後の最後にバラして納銛って・・・正直すげー気分悪かった。

 終了時刻に合わせてエキジット完了。すでに上がっていた他の3人は、島根県警の警官2人と和やかな雰囲気で会話をしていた。陸へと泳ぎながら警官の存在に気付いた際には面倒な職務質問になっていることを予想していたが、警官からオレへの第一声が「大きなアカミズ獲ったね〜」と言われた時には、あまりのギャップに少し面喰ってしまった。難しそうな顔した中年の警官に携帯のカメラでパシャパシャと魚の写真を撮られ、キジハタのサイズを気にすると若い警官がさっとメジャーを取り出し魚に当てる・・・(笑)。「52センチですね!」(自己記録更新・島根県警 現認)
 どうやら釣り人からの通報で来たらしいが、この警官達も夏には素潜りで魚突きをしている“オレ達寄り”の考えをもつモグラーだった。「あんた、あそこで1分以上潜っとったぞ!凄いな〜。」と褒められた時にはそれなりの言葉で応対したが、内心は「釣り人からの通報で来てるのに、オレ達の潜水時間なんか調べてどうするのよ?」と思っていた。職質中に警察官がオレ達の名前と住所を聞くことはあっても、警察官が自分の名前と連絡先の書いた紙をオレ達に渡すことなんてアリエナイ話だろ(笑)。

 その後もクーラーボックスの中を見ては驚き、これでもか!?ってくらい携帯の写メでパシャパシャと。続いては自分の携帯のデータの中から獲物自慢が始まり・・・何だ?この実況検分は?って感じの異様な光景だった。ま、根っからの警察嫌いのオレとしては少々腑に落ちない点もあったが、今日のところは大目に見てスルーしようじゃないか。何故ならここは海だから。みんなが仲良く楽しめるのなら、それで良い。



場所 島根県 某所
本日の突果
天候 晴れ
海況 波高 1.0m 弱風
大潮 満潮 12:00
透明度 6〜10m
潜水時間 8:00〜14:30
最大水深 16.4m(22.4℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン エスカペ
突果 ヒラマサ 64.0cm(自己記録) 63.5cm
キジハタ 52.0cm
(自己記録)
本日の食卓(実家にて寿司パーティー開催)
キジハタの握り ヒラマサの握り(ハラミ) ヒラマサの刺身 キジハタのタタキ




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