釣行記

『九絵日和』

突行日 2005.8.17


8月最後の日本海遠征。“夏の最後”という表現をすると少し寂しくなりますが、その分モチベーションを高く保ち、目的意識を持って海に臨むことができました。

■ 1本目(サケガシラポイント)

海はベタ凪、空は快晴、陸には釣り人も居ない絶好の魚突き日和。いつものように湾内の砂浜よりエントリーし、まずは実績のある沈み根付近を探って回ることにした。

湾外へ出ると、海は若干荒れ模様。海水はやや白濁気味で、透明度も良い所で5m前後しか見えない。魚影はいつもより幾分薄く感じたが、最初に潜った沈み根付近でいきなり40cmクラスのクエと遭遇。岩陰を微妙な速度で泳いでいたため、進行方向へと先回りし、開始早々のビッグチャンス到来を期待したが、射程圏内に入って来ないまま一気に深みへと逃げ込まれてしまう。

「ちっ、あれはスルーサイズじゃ!」

精一杯の強がりを言い放ち、沈み根探索を続けてみたが、これといった魚に出会えぬまま1時間近くが経過。魚が居ない訳ではないが、サイズがどれも小さ過ぎた。イシダイは30cmクラスを中心として、極稀に40cmクラスが顔を見せる程度。スズキ・ヒラスズキ共に成魚は1匹も見れず、マハタに関してはトータル10匹以上も確認することが出来たのに、その全てが30cm未満の幼魚ばかり。腰には“40cmは確実!”と思って突いたイシダイ(36cm)が1匹、寂しそうにぶら下がっている。

開始から2時間が経過しても、状況は一向に変わらなかった。いや、むしろ流れとしては悪くなってきている。新たに発見した沈み岩付近にて40〜50cmのイシダイ数匹を目撃するも、何度チャレンジしても“あと1歩”が寄せきれず。キジハタは40cm弱を真正面から数秒間ロックオンしたが、2〜3m離れた所にホバリングしていた一回り大きな個体に気を取られ、結局2匹揃って撃てず終い。時間の経過と共に“もどかしさ”ばかりが募っていった。

「そろそろ上がってポイントを変えるか。。。」

透明度、魚影共にパッとしないポイントで、3時間近くも潜ればそう決断するのは自然の流れ。ポイントを限局した“寄せ”や岩下探しを中断し、中層付近をフラフラと平行移動しながら、エキジットポイントへ向かうことに・・・。

しかし、諦めかけた数分後、前方の海底(岩陰)を手前方向に向かって泳いで来る大きな茶色の魚影を確認する!やや遠目で解かり難いが、その正体は紛れも無くハタ科のシルエット・・・、クエだ!サイズは60cm前後。岩陰が死角となっているため、おそらくこちらには気付いていない様子。瞬時に進路を予測し、大きな岩陰へと身を隠す・・・。ゴムはすでにMAX引きでスタンバイ!!

「頼む…。」

「…。」

息を凝らし、クエが来るのを待つこと数秒…ヤツは予想していたよりも少し深い所から顔を出した!

「くっ、僅かに射程圏外・・・!」

しかしオレの存在に気付いたヤツは、こちらを向いて一瞬ビタ止まり!!その隙に左手1本を使った小さなモーションで射程圏内に入り、僅かに横を向きかけた瞬間を逃さず、頚部目掛けてヤスを撃ち込んだ!!


ドスッッ!!!


視覚から伝わってくる素晴らしい手応え!オレの目の前には、エラから胸鰭付近を深々と貫通され、ピクリとも動かなくなったクエの姿が・・・!超快感!!


「ぅうおぉ〜〜!!クエをキルショットで獲ったぜ〜〜〜!!!!」


クエ 60cm!!

心の底から沸々と沸き上がる達成感を抑えきれず、串刺し状態のクエを片手に叫びながらガッツポーズで浮上!ところが海面到着と同時にキルショットで仕留めたはずのクエが突然大暴れ!

「ヤベぇ(汗)!!」

焦って掴みかけた際に手袋の上から手をザックリ切ってしまったが、チョッキもヤスも魚から抜く前だったため、なんとか最悪の事態は避けることが出来た。油断し過ぎたね。ハタ科の魚は最期まで“しぶとい”ってのを忘れてたよ。もしもここでクエに逃げられていたら、、、うわぁ〜、考えたくねぇ〜(笑)。

クエをナイフで絞め、無事ストリンガーに通した数分後、今度は45cm強のキジハタと遭遇する。すでにクエ捕獲後だったため、「逃げられてもいいや!」くらいの軽い気持ちで寄って行ったが、そんな時に限っていつも以上にスムーズに射程圏内へ。そして間髪入れずにヤスを放った!


ズバッ!


鈍い感触と共に、キジハタは腹部をシャフトまで貫通!そのままの流れでキジハタを掴みに行けば良かったが、息苦しさとちょっとした気の緩みから、少し横着だが浮上しながら引っ張り上げることに。もちろんキジハタは大暴れ。しかしチョッキが貫通している今、恐れるものは何も無い・・・はずだった。

ガガガガ…ガクッ。

「あっ……。だぁ―――!!!」

・・・。

シャフトまで貫通したことにより、傷口が大きく広がっていたのだろう。途中までは良かったのだが、海底へ向かって鋭い突っ込みを見せるキジハタに対し、チョッキは少しずつ身切れの方向へ。そして・・・。

今回ばかりは魚に対して申し訳無かった。直前にクエを獲っていなかったら、もっと慎重になっていたはず。真っ先に押さえに行くべき・・・、いや、いつも通りの対処をするべきだった。そうなれば違った結果になっていたかもしれない。自分の慢心がバラしの原因になるとは。。。スキル以前の問題だね。それから30分近く、周囲の岩下や海底を探し回ったが、傷を負ったキジハタを再び確認することは出来ず。良い魚を獲りながらも、胸の内がスッキリしないまま1本目を終えることに。

■ 2本目(サケガシラポイント)

先週のリベンジを果たすべく、車を走らせ一路ハンマーHPへ!ところが現地は北風の影響をもろに受け、辺り一面が白波立っていた。濁りもキツそうだし、リベンジどころではない。来た道を直ぐに引き返し、再びサケガシラポイントで潜ることにした。

2本目のメインテーマは以前から楽しみにしていた水中カメラの初使用。一応手銛も海に持って入ったが、あくまでもメインは水中撮影ってことで。

11時30分、再びサケガシラの海へエントリー。まずは砂地に群れるキスやボラ、小さなグレやイカの群れを撮影。透明度があまり良くないせいか、イマイチ何を撮っているのか解からない。ならばと水深の浅い磯場へと移動し、光の届く範囲でシャッターチャンスを伺ったが、ここでも動く(逃げる)被写体をレンズに収めることの難しさに戸惑うばかり。タカノハダイやタナゴですら満足に撮ることが出来ず、綺麗に撮れるのはカワハギや根魚などのいわゆる固定タイプのみ・・・。キジハタは2時間弱で3匹確認したが、まともに写っているカットは一枚も無かった。30cm弱のクエも岩穴から顔を出している所を撮ったんだけどなぁ。。。ん〜、残念。

結局2時間ほどでバッテリー切れ。30〜40枚近く写真を撮ったが、納得のできる写真は僅か3〜4枚。でも凄ぇ〜楽しかった!魚突きと一緒で、慣れればもっともっと良い写真が撮れるようになるだろう。新たな趣味になることは間違い無さそうだ。

イシダイの幼魚達 ハゼの仲間? 逃げるハコフグ
ボラの戯れ 佇むカサゴ マハタの幼魚

ベルトにカメラを固定し、魚突きを再開する。1本目でキジハタ&イシダイを見た沈み根や、2本目でキジハタを撮影した岩場を巡回したが、特に目ぼしい魚の姿は無し。ところがマハタの幼魚を撮影した岩下の近くで、低速で逃げるキジハタ(35cm)を後ろから追いかけている際、ふと視線を前方の岩肌に移すと、今日一番のドデカい魚が目に留まった!本日4度目のクエとの遭遇だ!しかも今まで見たことも無い太い魚体。サイズは推定80cmクラスか!?こんな浅場にこのサイズが上がってくるなんて。。。当初はキジハタに夢中になっていたため、オレがクエの存在に気付いた時は、すでにヤツも警戒モード!!

「この間合い、どうする事も出来ねぇ・・・。」

しかしここで何もせず突っ立っていてもクエは逃げるだけ。すでにヤスゴムはスタンバっていたため、キジハタを追うそのままの流れでフラフラ〜っとクエに近付いて行くことに!その直後、クエは予想通りに逃げの体勢へ。そして大きな魚体を翻し、すぐ近くの岩下へと入って行った!!

「ん?あの岩下は…!?」

そう、クエが入った岩下は、先程マハタの幼魚を撮影した岩下だった
(海中写真・右下参照)。実はこの岩下、裏口も無ければ逃げ場も無い!しかも底が完全にフラットな砂地のため、穴の形状も複雑ではないはず!これはもしかして・・・、もしかするのか!!??

すでに頭の中は本日2匹目のクエ捕獲→大幅なサイズUP→ヒーロー→クエ三昧→食べきれない→冷蔵庫or冷凍庫or実家or近所→再びヒーローという勝利後の方程式が脳裏を駆け巡っていた。はやる気持ちを抑え、穴を覗く前に一旦浮上し呼吸と心拍数を落ち着かせる。そしてヤスを構え、いざクエの眠る水深12〜3mの岩下へと向かった!ところが・・・

「・・・?い・・・、居ない!」

いくら目を凝らして見ても、岩下には小魚すら居ない。念のためヤスを奥まで突っ込んで、穴の形状を探ってみることに。ズブズブズブ・・・。予想外の奥行き。岩下の高さ(入り口)は20〜30cm程度しかないが、形は扁平で奥行きがかなりありそうだ。しかもヤスを突っ込んだことにより、砂煙が上がり、中の状態が全く見えなくなってしまった。

「ダメかぁ・・・。でも絶対ここに居るはずなんだけどな。。。」

とりあえず浮上し、しばらく休憩。次の潜行で再び岩下を覗くと、おそらく大型魚の呼吸であろうリズムに合わせ、岩下から砂煙が少しずつ吹き出て来るのが確認できた!これは何より岩下にクエが潜んでいる証拠だろ!!岩下の視界はゼロに等しかったが、砂煙の噴きだす方向へヤスを向け、渾身の一撃を穴の奥へ打ち込んだ!!


ザシュッ!





・・・ゴッ!!!


最初にヤスが底の砂地を掠める音が聞こえたが、次の瞬間、それとは別に何か大きな物が岩肌にぶつかる鈍い音が伝わってきた!絶対中に大物が潜んでいる!!やや興奮気味に岩下からヤスを抜くと、ラインの先には何故かウニが一つぶら下っていた・・・。ん?中のスペースは広いのか?そう思う同時に、少し冷静になってこの状況を考えてみた・・・。

『こんな狭い岩下で80cm近いクエを突いても、引っ張り出すのは無理でしょ?』

もちろん当たるかどうかも分からない。引き出せるかどうかも、やってみなけりゃ分からない。しかし、このサイズのクエ・・・だ。結果論ではあるが、確率的に低いと分かりながら無駄殺しをしてしまうのは、あまりにも惜しい。今日はこれ以上の刺激は止めておこう。次に会った時、必ず獲ってみせますよ!

■ 本日の総括

8月最後の島根遠征は、この夏最も充実した遠征となりました。見た魚も獲れた魚も、今のスキルではこれ以上の事は望めないでしょう。もちろんスキル・メンタル両面において反省すべき点は幾つかありましたが、初めての水中撮影や、今季2匹目のクエの捕獲&大型クエとの遭遇など、満足度の方が遥かに高かったのは言うまでもありません。
次回の島根遠征は人生初の単身魚突きキャンプとなる予定!ここでも是非、良い思い出を作りたいですね!


場所 島根県某所
『本日の突果』
天候 晴れ
海況 風強く 波高1.0m
―――
透明度 4〜7m
潜水時間 7:30〜14:30
最大水深 13.8m(29.2℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛 
フィン エスカペ
突果 クエ 60cm(自己記録)
キジハタ 33cm
イシダイ 36cm
本日の食卓
クエパーティー
左の写真は、前回凄く美味しかった胃袋と皮の塩胡椒炒め(ネギ掛け)。今日も最高に美味かったぞ!!
そして右はちょっと見え難いけど薄造り・・・。あっさりとした味の中にも、しっかりと主張する甘みがあり、薬味を効かせたポン酢で食べると・・・おぅ・・言うこと無いっす!
もちろん鍋も頂きましたよ♪やっぱクエ鍋・・・最高♪





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