釣行記


『2枚貫き』

突行日 2004.6.30


なぜだか数日前から今日の日本海遠征が楽しみでたまらなかった。いつもの場所にいつものように一人で行くだけなのに、そわそわして落ち着かない。こんなにも突行が待ち遠しい、純粋に楽しさを求めている自分を感じて、少しほっとしている客観的な自分もいる。

夜はなかなか寝付けず、浅い眠りから4時30分に起床。定刻どおり5時に出発。道中の山越えで、数年ぶりの野○ソをしたことを除けば、何事もなくいつものポイントに無事到着・・・。のハズが、さっそく着替えようと全裸になると・・・???・・・今日はえらくオレのチ○コが大きいじゃないか!?どうやら野○ソの際、開放感に浸っている間に、無情にも薮蚊にモノを刺されてしまったらしい。どうりで今日はカユイわけだ。茎の部分がまるで真珠を入れているかのように大きく腫れ上がっている。あの態勢はあまりに無防備だからなぁ。。。

潜行中に痒みが出ない事を祈りながら身支度を済ませ、8時30分より突行を開始する。海は穏やかだが北からの風が少し出ているため、時間的に大きく変化することもある。今回も、まずはエントリーポイント付近のテトラ周辺から攻めることにした。

海中は春濁りの真っ最中。透明度は3〜5mといったところだが、相変わらずテトラ周囲の魚影、魚種共に豊富で潜っていて楽しい。数回の潜行の後に目の前を1匹のスズキが横切った。サイズは小さいが身はしっかりと締まっていて美味しそう♪Uターンして帰ってきたところを落ち着いて狙い撃ち!ヤスは両側のエラを砕いて貫通したため、少々暴れたくらいでは大丈夫。

今夜は友達との宴会予定のため、メインポイントに行くまでに何かもう1匹くらい欲しいところ。少し欲を出しながら、しばらく水深5m程度のところで魚を待ち続ける。すると今度は1匹の見たことのない縞模様の魚を発見・・・。シマイサキ!?図鑑で見た記憶だが、たしか『美味』と書いてあったはず・・・。しかし初めての魚はどうアプローチすれば良いのかよく分からない。とはいえ迷っていても仕方が無いので、徐々に間合いを詰めようとしたが、砂地一面のテトラ付近から少し沖に出ているため、死角が無く簡単に寄ることは難しそうだ。結局這うように海底を進み、ワンダッシュしてヤスを発射!そしてこれまた先程のスズキ同様に両側のエラを見事貫通!今日はヤスの調子が絶好調。いやいやオレの技術の賜物か?すぐに調子に乗ってしまう単純な頭が情けない。

開始から20分近く経っただろうか。その後もイシダイ狙いで潜行を繰り返していると、前方4〜5mのところに大きな見慣れたシルエット、45cm前後のチヌだ!チヌは秋まで獲らないと決めているが、シミュレーションには調度良い相手だ。しばらく待ったが寄ってこないので、こちらが少し近寄ってみると、近くの岩穴へと逃げ込んだ。直ぐに追いかけて穴を覗く。居たぞ!立派なチヌ!ヤスを向けて5秒以上ロックオン、標的との距離は50cm以内・・・よし。オレの勝ち。ヤスを撃ちはしなかったがこの結果に自己満足。ちょっと余裕をかましながらメインポイントへと向かった。 

10分ほど泳いでメインポイントへ到着。波は少しずつ出始めたが、透明度は5m前後をキープ。到着するや否やカタクチイワシのような小魚が水面に群がっているのを発見。何かいるのか?次に目に飛び込んできたのは、6〜7m前方に薄っすらと見える大きな黄色い尾鰭を持った魚の群れ・・・ブリ!?ヒラマサ!?はっきりとは見えないが、数尾の群れが小さな半径をグルグル回っている。初めての回遊魚との御対面に、心臓はもうバクバク!その直後、落ち着きを取り戻す事も忘れ、魚を横目に潜行。しかし、海底にて待ってみるも、寄るどころかいつの間にか視界から消えて見えなくなってしまった。数回の空潜りを繰り返してもやはり姿を現さない。まだまだオレには早過ぎる相手だったのかな・・・、と潔く諦めて近くの岩穴を覗いて回ることに。

水深8m前後、大きな岩が重なり合ってできた大きなスペースの入り口に、数百という小魚の群れ。それを掻き分けるように奥へと突き進むと、1匹の見慣れない魚影を発見。なんだこいつは!?サイズは30cm前後。アイナメか?しかし、この色と斑点模様は・・・ん?ま、まさか・・・キジハタ!?うわっ、2週間前に料亭で食べた時にはキロ12000円もした高級魚が目の前に!!明らかにこちらの存在に気付いているものの、ずっと向き合ったまま動こうとしない。確実に捕らえるため、ヤス先を頭に向けたまま、ひたすら横を向くのを待つ・・・。そして素早く反転しかけた一瞬を逃さず、ヤスを一閃!ヤスは頭部に深々と突き刺さる完璧なキルショット!!


『うぉ〜!!やったぜぇ〜!!初アコウじゃ〜!!』


久しぶりの水中雄叫び(笑)。スカリに通した魚を何度も何度も確認・・・。「キミ、キジハタだよね?」

今日は初物が多い日だ。この勢いでクチグロに挑戦したかったが、現実はそんなに甘くない。30分以上粘って獲れたのはオカズサイズのサンバソウ。とりあえず休憩をしようと、岸に向かって泳いでいる間に事件は起こった。

海面での移動中、水深6〜7mの海底にふと目をやると、50cm程度の魚のシルエットがぼんやりと見えた。魚種の特定ができないため、少し離れたところから潜行し、後ろからこっそりと近寄っていくことに。・・・4m、3m、2m・・・、この斑点、分厚い唇?コロダイか?また初めての魚だよ・・・。ほんと、魚図鑑見てて良かったな〜(笑)。

すぐに獲りたい気持ちを抑えながらも、自然な流れで接近し、射程圏内に入ったところでやや斜め上からエラ付近に撃ち込んだ。またまた楽勝♪のはずだったが、ヤスは僅かに狙いがずれ、胸鰭付近を直撃。そして入射角が悪かったのか、深く刺さらずに逃げられてしまった。「ちっくしょ〜(涙)!」絶好調続きの今日、初めて味わう悔しさ。それでも不思議とあまり速く逃げなかったので、少し期待しながら追いかけたが、結局微妙な速さで振り切られてしまった。・・・ダブルショック!後悔しながらも、ほんの僅かな期待を胸に、逃がしたコロダイを探し回る。あの速さならそんなに遠くには行かないはずだが・・・。やっぱりダメかと諦めかけた数分後、バカデカい岩の横にたたずむ1匹の魚・・・。そして胸鰭付近の傷跡・・・。

「おっ♪さっきのコロダイじゃん!!」

今度こそはと慎重に寄ったが、さすがのコロダイも2度目は簡単に突かせてくれず、大きな岩下にあるスペースへと逃げて行った。追うようにしてオレも穴を覗き込む。しかし、すでにコロダイの姿は見当たらず、待っていたのは30cmのイシダイ1匹。反対側の抜け穴から逃げられたか?仕方無い。コイツで我慢するか。・・・と、ヤスをイシダイに向け、撃とうとした瞬間、そのイシダイを守るかのように25センチくらいのカサゴが割って入ってきた。

「小僧、邪魔をするな・・・。お前ら2匹、一度に突いてしまうぞ!?」

本気で2枚抜きが出来そうなシチュエーション。やってやろうか?だけど、ここは確実にイシダイが欲しいところ。確実性重視でいくべきである。ヤスはイシダイへ向け、間に居座るカサゴが避けるのをじっと待つ。数秒後、カサゴがその場を離れた。そして今度はイシダイが横を向くのを待ち、至近距離から頭部に容赦のない一撃を!もちろんクリーンヒット!!ほぼキルショットに近いのか、イシダイはまったく動かない。となれば後は穴から引っ張り出すだけだ・・・。なのに・・・、おかしい・・・。なんだこのシャフトから伝わる強い振動、大きく揺さぶられるパワーは!?わけも解からぬままとりあえず岩穴の壁にヤス先を押さえつける。そして岩穴をもう一度覗き込んで確認。

現にイシダイは動いてないじゃないか!?


・・・な、何??何故、君が!?


思わず頭を抱えたくなった。微動だにしないイシダイの向こうで、先程のコロダイが暴れている!!30cmのイシダイと、50cmのコロダイの2枚抜きだ!ヤス先をよく見ると、コロダイは尾の付け根に刺さり一応貫通しているが、いつ身切れを起こすか分からない微妙な状態。

さすがに息が続かず一旦浮上。水深は10m。間髪入れずに再潜行。この状況、どう打開すればいいのか?ヤスをそのまま引っ張り出そうにも、2匹の魚が狭い岩壁に引っ掛かりスムーズに出て来ない。強引に引っ張れば、イシダイは大丈夫だとしても、コロダイは間違いなくヤスから抜けるだろう・・・。同じ魚を2度バラすのは御免だ。周囲を見渡すと、反対側に約20cm四方の小さな抜け穴を発見。そこから手を入れると、なんとかコロダイの頭まで届いた。すかさずコロダイの鰓に指を入れて引きちぎる。致命的ダメージを与えられない今、徐々に魚を弱らせてからヤスを引っ張り出すしか確実な方法は無い。イシダイを間に挟んでいるためにヤスの刺さりが浅く、急に暴れ出せばいつヤスから抜けるかも解からない。

10mの水深で、何度も何度も潜行と浮上を繰り返し、少しずつ魚を弱らせていった。去年70cmのコブダイと戦った時のことをふと思い出した。でも、あの時よりよっぽどしんどい・・・。

10分後、コロダイが弱りきったと判断してヤスを抜こうとしたが、魚が岩肌に引っかかって穴から出て来ず。結局反対側の抜け穴から両エラをがっちりと掴み、コロダイを岸壁に擦り付けながらもギリギリのところで強引に引っ張り出した!ミッション完了・・・。いかに初対戦の魚とはいえ、最初に出会った時点で獲っていればこんなに疲れることもなかった。これは自分の技術不足と、ほんの少しの慢心からきたものだろう。でもその魚を執念で見つけ出し、結果的にイシダイとの2枚抜きという形で終わることができた。足りない『技術や経験』はある程度『運』でカバーできる。非科学的な事を言うようだが、オレは人より少し運が良いような気がする。

おっと、忘れていた。コロダイをスカリに通した後、無事にヤスと一緒に穴からイシダイを引っ張り出し、これでホントに任務完了!

時間はまだまだあったが、波酔いしそうだったのと、宴会の肴は十分に揃ったので、今日は早目に切り上げることにした。短時間の突行なのに、内容が濃かったせいかかなり疲れた。

でもこんなに心地良い気分になったのは久しぶりだ。




場所 島根県某所
『本日の突果』
天候 晴れ時々曇り
海況 風強く波高1m
中潮 満潮9:30
透明度 3〜7m
潜水時間 8:30〜10:30
表面水温 24.0℃
最大水深 10.0m(22.9℃)
ヤス 2又手銛 2.7m 
フィン ワープフィン
突果 キジハタ 32cm  (初突果)
コロダイ 48cm 
 (初突果)
シマイサキ 28cm  
(初突果)
イシダイ 30、25cm
スズキ 42cm
ハコフグ 1匹
本日の食卓
【左:刺身盛り合わせ】  【右:キジハタ薄造り】
何と言っても今日のメインは初のキジハタ!刺身は超絶品、さすが高級魚だ。この味に慣れてしまうと他の魚が・・・。盛り合わせは左手前からシマイサキ、スズキ、イシダイ、コロダイの順。シマイサキの刺身が非常に美味しく、歯応え、甘みともにイシダイを凌いでいたのには驚いた。コロダイはカルパッチョに良く合う!この他にアラでとった吸い物、コロダイのカマの塩焼き、スズキ、コロダイのカルパッチョ。結果、宴は大盛況でした♪





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