俺達のケビン

『俺たちのケビン2018』
〜らくだの背中から見る風景〜

らくだ らくお  聖地13年生

<魚の調達~前夜祭>

3週連続の運動会、地区の文化祭、中学校の文化祭…

「怒濤の秋」を何とか終え、清々しい晩秋の空の元、聖地に向かう朝がやってきた。

まずは残念ながら不参加となったダルさんの職場にお邪魔し、彼の魂である魚達を聖地に運ぶ役を仰せつかった。

相変わらずハイセンスな魚達を集め、その場で神経抜きまでしてくれる。いつも本当にありがとうございます。

ちなみによくイメージされる「年配の方が多い漁協の仕事」とは裏腹に、ここでは若い方が多く従事され、中にはイケメン男性や素敵な女性の姿も見えた。

「ダルさん、あのメスも自慢の棒で神経締めてもらって、女体盛り用にイイすか?」などと軽口を叩こうとしたが、ダルさんのお気に入りだった場合、自分が鼻の穴から神経締めされ、播磨灘の藻屑となる恐れがあったので心の中にしまったのはここだけの話にしておこう。




万全の状態にしてもらった魚を受け取り、某SAで奈落と合流して(してやって)、一路聖地へと向かう。

車中では御互いの腹の探り合い…と思いきや、ムルさん(奈落)が最近始めたランの話に。

通勤でランができる。あのスリムな体型…これは多分ハマるだろうな。




松江の温泉で身体を清めて、晩ご飯にイマイチなラーメンを食べてから、チャンプのお宅にお邪魔した。

相変わらずアウトドアな男心をくすぐるグッズ(アダルトじゃないよ)が散乱しており、ボケー(゜ρ゜)っと眺めながら家主の仕事が終わるのを待つ。

しばらくすると満面の笑みを称えたチャンプ様がご帰還だ。

毎年、夜遅くにも関わらず我々を歓迎してくださる寛大なチャンプに多大なる感謝エンド感謝。

さらにありがたい事に我々のような下々にイシダイやヒラマサを振る舞ってくださるチャンプ。

ハムにしたり、長期間熟成させたり…ウマイウマイ

もはやこの時点で前人未到のKOC三連覇は決まったのでは…という念が頭を過った頃に、エルシ到着。

持ってきた自家製ハチミツ(極美味)をナメナメしながら、汗臭い男のトークで夜が更けていく。




<翌朝>

皆より早く起きて、毎度遅刻の原因となる「大きい方」を捻出し、ラジオ体操や御近所ジョギング(漁サンでやったら皮剥けた)まで済ませ、出発した。




集合場所に到着し、1年ぶりとなるメンバーや四つ手同好会(6月)ぶりのとなるメンバーと談義に花が咲く。

楽しい時間が過ぎ…

ん?薬局の駐車場でユッタリしてどうするのだ?

早く行こうぜ! 

へっ?まだ1人来てない?

誰?



遅刻王のジンくんが到着したのは集合時間の1時間後。

近所に住む彼は電話口で「今、出ます」を連呼していたが、誰一人その言葉を信じていたものは無かった…


<潜り>

予報通り海は大時化。
自分の作戦は「いのちをだいじに」。
とりあえず潜り道具を海水で濡らして、それとなく合流すれば問題無いだろう(←あるだろう)との認識だ。

案の定、漂いだしてすぐに波酔いが。酔い止め飲めよと、今考えても突っ込みたくなるが。


「さてこのまま…」

いやまて

腰には何もぶら下がってない。

今日は何しに来たの? 

苦い顔の嫁、父が会社に行っていると疑わない子供達。

それらを華麗にスルーしてKOCしにきたんじゃないの?

勝ちに来たんじゃないの?

エキジット寸前で本懐が呼び戻される。


触手の切れたアカクラゲのように毒づいて海に浮かんでいる自分に出来ること‥

それは波の無い浅い場所で突人の視界に入っても認識すらされない小メバルに長尺の手銛を撃ち込み続けることだけ。

ぱすっ

スカッ

ぱすっ

スカッ



集合時間ギリギリまで粘ったかいあって、掌サイズのメバルを数尾間引くことに成功した。

お疲れ、俺。

ありがとう、メバル。


マスクの中は しょっぱい涙が溢れていたとさ。




あれ?

あのヒラメ、テルくんの?

みんな何も突いてないの?

チャンプも何も突いてないの?

なになぜ?

これどうなるん?

KOCあるの?

ちょっと寒さですぐ理解できないけど、自分が予想していない方向に事態は動いてきたようだ。




<腹出し>

「さて、どうするか」
「いや、3人でやるでしょ」
「全然いいんだけどさ、盛り上がるのかな?」


み〜ちんさん、ジンくん、自分は岩場の片隅で何とか仕留めた小魚の腹出しをしながら、今夜のメインイベントについて話し合った。

確かに海は荒れていたが、何かしらの魚が採れない状況ではない。

採った3人と採れなかった(採らなかった)3人を同列に扱うことはKOCのルール上、難しい。

しかしチャンプを含む3人とて、この一年間KOCに向けて精進を重ねてきた事は容易に想像がつく。何よりチャンプの3連覇はライバルである自分達も期待しているのだ。

なにか丸く収まる方法は‥

思い出したのは2014年のKOCにおいて、魚が採れなかったチャンプと み〜ちんさんをKOCとは別の「前座戦」で争ってもらった事だった。

これを参考に “採れなかった3人には「前座戦」を行ってもらって、勝った1名に「本戦」であるKOCの出場資格を与える” という事にまとまった。

幸いにも魚はダルさんが持たせてくれた旨い奴等が沢山ある。

採れなかった3人にも納得してもらえた。

合計2戦か‥長い夜にはなるが、間違いなく楽しい夜になるだろう。


<昼寝>

寒さと波でヘトヘトの一同は休憩所で少し談笑した後、ベルに向かって食材を確保した。

お互いに探りをいれながらの買い物はもはや恒例の行事だ。

しかし腹が減って眠い。

ということで、ここで少し食事を済ませて、聖地の駐車場(迷惑にならない広いところで)で仮眠となった。

素晴らしい。

これで夜更かしに拍車が掛かる。
聖地の「過ごし方改革」だ。
※チャンプは寝ずにお散歩してたらしい。どんな体力だ(笑)


<Tシャツ>

昨年、マツさんのアイデアで「ケビン集合Tシャツ」を作ろうという話になった。願ってもない企画であったので、時間を掛け(仕事中に)シコシコとデザインを練って仕上げた。




メンバーには広島飲み会や四手網で試作品をお披露目済み。

あとこの聖地への情熱を見せたい人達といえば・・・

そう!

職員さんだ。

ガサツにドアを開いた緑色のTシャツの一団がズカズカと管理棟に乗り込んでくる。
フロントの男性とカウンターごしに見つめ合う。

不審な一団が来ているTシャツに描かれている建物が、このキャンプ場の「ケビン」であることが分かった瞬間のあの表情・・・

かってこんな珍客がいただろうか。

いや、いない。

時間も掛かったし、安い買い物ではなかったが、ただただ嬉しかった。

聖地へのリスペクトは初めて「形」となり、職員さんへ伝わった。




<ダルさんの魚> 

今年は底引き網が良かったこともあって、普段はまとまった量が手に入らないミシマオコゼやセトダイ(タモリ)の良型を入れてくれた。

他にはイネゴチ、トラギスなど。丁寧な仕事と皆が喜ぶチョイスに感謝。

炊事場で写真を撮った後、刺身、塩焼き、ホイル焼き、そして天ぷらを作った瞬間から食べまくる。

一同が瀬戸内フィッシュの繊細な肉質と素材の良さに感動を覚えた。




横では里崎さんが火を起こしてくれてるぞぃ。
流石に手際がいいわ。フェザーなんたらってこうやるんだね。

おお、暖かい。

冬場の聖地の炊事場には焚き火。

新たな定説が加わったわい。




<前座・調理>

さて調理が始まった。

ビール片手に人が料理を作るのは最高‥と言いたいところだが、自身もこの後に一戦を控えているので、何とも言えない気分だ。

脇目も振らず、必死に料理をしている前座メンを眺めながら、あっという間の1時間が過ぎる。

出来映えは‥

ぐぬぬ、前座の癖にどいつもこいつも旨そうに作りやがって‥

しかし、本選までにネタを消費しただろうに。

ふふふ。

やはり魚は採れるものを採っておくのが鉄則だな。




<前座・実食>

ふむ。

どれも旨いぞ。

甲乙着けがたいのが正直な所だ。

しかしKOCでは「美味しい」に加えて魚の活かし方や発想も加点の対象になりうる。

その中で選ぶならば‥




<前座・結果発表>

チャンプが陥落したか・・・。
レジェンド・オブ・ケビンが誕生しなかった事実。
残念な気持ち。しかし、少しホッとしたような‥
自分も三連覇を為し得ることができなかったから・・・か。


本選進出はムルさん。
身の回りもお洒落で外車に乗ってる(←関係ない)
料理好きだけあってアドリブもこなせるだろう‥強敵だな。


<本戦・調理>




さてはじまったわ。

練習通りにこなせば、時間は大丈夫。

ドシン

保温の準備も抜かりなし。

ドシン

ウワー

ドシン

肉量は‥まぁ、大丈夫か。

プレゼン準備の3分はありがたいな。

ドシン



あれ?塩ってさっき振った?

うーん分からんけど、もう一回振っとこかな。




つーか何だよ。さっきから。

このドシン、ドシンって音?

うお。

クサモチ氏(み〜ちんさん)の野郎が何か奇怪な事している。




あれはトレーニング?

いや、D Vか?

いずれにせよ調理とは思えないが、とんでもないものを見せられたな。しかし集中を切らしてはならんぞ。

・・・


何だかんだで1時間終了。

毎年思うけど、早いな。



<本戦・試食>

これがクサモチ氏の料理か。
料理か・・・?

調理のインパクトでは今までで一番かな。

ヨーグルトやザオラルに並ぶ・・・

パク

硬い。ただただ硬い。

骨が歯茎に刺さったわい。イタイ

色んな意味で危険な料理だったぜ。







ジンくんは魚はタカノハダイ、グリーンカレーに大根か‥悪くない組み合わせやな。ビールも進む。

タカッパにグリーンカレーか‥
ん?
前にも何かそんな組み合わせがあったような‥

はっ!?

「タカノハルマキ」

ジンくんは知らなくてもしゃーないか(笑)




さてさて自分の番だ‥
変な天ぷら揚げて‥あばば、何か上手く行かない。

小道具も用意したけど、あんまり有効に使えてないか。

結構ぐだっとした感じで終了。
おつかれさん。




最後はムルさんか‥
ピンチョかパンチョか知らんけど、何だかオシャレなものが出てきたぞい。

炙りのパフォーマンスも食欲をそそるわ。
うん。ゴボウとチーズとウシノシタのハーモニーが非常に良い。バランスも取れてる。これを即興で作るとは‥恐ろしい。


<本選・結果発表>

3位はジンくん。

ムルさんと自分の一騎討ち。


正直、相手方の味とインパクトにはちょっとビックリしたな。


今の心の中のリトルらくだは「微妙だけど70%で負け」だって。


‥全然微妙じゃないか。


ドキドキ

何かの間違いで俺の手が挙がっちゃったりしない?









あっ、負けました。

相手が強かったな。その一言に尽きる。

残念な気持ちもあるけど、ホッとした方が強いかな。



〈夜更かし〉

KOCの緊張も解け、日付も変わっていつも通りユルッとした時間に入る。

手押し相撲はあったか?いやなかったか?

潜りの話、魚の話、自分の話、人の話・・・

一人一人と眠りの世界に落ちていく。

年に一度の短小濃厚な聖地の夜も少しずつ終わりに近づいて・・・


「らくちゃん!組体操せん?」


・・・

3時過ぎか。そろそろ来ると思ったぜ。
毒をくらわば皿まで。望む所です。

ニコニコの創始様に引っ張り出され、半分寝ているテルくんと一緒にケビンの外へ・・・


うわ!!!!
寒っっっっっっ!!!!


これはいけません。心臓かキュッとなる。
ああ、聖地の神よ。これは、この胸の締め付けは恋or T O K I M E K I?
(↑心臓麻痺の8歩手前くらい)


下のアスファルトも氷かと思うくらい冷たい。
上半身はケビンT着用、下半身は生まれたままの姿でトーテンポール。

2018年ケビン集合のモニュメントは夜明け前にひっそりと完成された。




冷えた体を温めるためまた呑み。いつの間にか、寝袋で就寝していた。


Z Z Z


<朝>

前夜の活動時間もそっちのけで体内時計はいつも通りの時間に起こしてくれる。う○こを済ませて、洗い物に水を張ったり、散歩したり。

皆んなで朝飯、片付け、淡々とスケジュールは進み、あっと言う間に解散まで。

一年後の再会とKOCのリベンジを胸に近い、チャンプ様をマイカーにお乗せして聖地を後にした。


帰りの道中はチャンプと今回の振り返り。
たわいもない事、潜りの事、キャンプの事・・・

交代で運転しながらあっという間にお別れのサービスエリアへ。

長くて短い祭りも終わったか。





車の中で何度も盾を眺めて嬉しそうにするチャンプ。
そうだ、来年でKOCは一旦終わる。

み〜ちんさんのアイデアで始めたK O Cはそのセンセーショナルなシステムから、10年余で多くの方に楽しんでもらえたようだ。
ただそれは狙ったわけではなく、当人達が散々楽しんだ(とっても苦しんだ)結果である。

ケビン集合は初期のように単なる集合に戻るのか?また何かの形で継続されるイベントを行うのか?

その結論を出すにはまだまだ時間があるから、皆で考えたいな。

みんなで楽しめる(苦しめる)イベントを。


【完】