釣行記


『さよならスパシオ』

突行日 2006.8.30


 夕方から自動車学校の技能教習があるため、いつもより早めの突行開始を余儀なくされた。「どうしてそこまでして潜るの?」という嫁の問いかけには耳も貸さず、日の出前の朝4時に広島を出発。市内某所で水君と合流し、現地へは7時過ぎに到着した。

『実はこの日が我が愛車スパシオ号で行く、最後の突行となった。我が家の諸事情により、8月31日をもってスパシオ号は某有名中古車販売店へ・・・。走行距離13万7千キロ。下取り査定価格、0円。日本海、瀬戸内海、太平洋・・・様々な地で潮風を浴びてきた魚臭い車とも、この突行でお別れとなる。オレにとっては学生時代からの良き相棒。今日、どうしても島根に行きたかった理由は、最後にこの車に乗って遠征したい!という思いからだった。』

 ■ 1本目(サケガシラポイント)

 空は薄曇りだったが、海況は今日もベタ凪。水君に「クエ1匹、キジハタ4匹、イシダイ4匹獲ってきま〜す♪」と冗談混じりに伝え、エントリーポイントを後にする。

 まずは10分ほど泳ぎ、イシダイの根へ。
 透明度も高く、小魚の群れは水面からはっきりと確認できた。息を整え、期待値MAXで潜行を開始。魚影の方はまずまずだったが、熱くなるような魚は全く見当たらず・・・。イシダイのサイズはどれも40cm以下。これではまともに寄せる気にもなれず、数回の空潜りの後に早々とポイント移動。

 続いてキジハタが頻発する岩の割れ目へ。
 ここでは前回キジハタを見過ごしていたため、この辺りには確実に居るだろうと確信していた。案の定、岩の割れ目の中から恨めしそうにこちらを見つめる1匹のキジハタを早々に確認する。静かに近付けば逃げる素振りも無い。ヤスを構えて睨めっこ。いつもこの時間は最高に楽しい。「さて?キミはどんなリアクションを取るのかな?」結局コイツは少し後退しながら逃げの態勢へ・・・。横を向いたところを難無く捕獲!キジハタ42cm。
 それから数分後、少し離れた根回りを徘徊中の相方(?)も、若干小振りではあったが遠慮無くキープ。キジハタ38cm。

 その後も実績のある根を中心に、潜行と浮上を繰り返した。寝不足のせいか息があまり続かず、そのうえ耳の抜けが非常に悪い。潜行中に耳抜きが出来ず、不意に目の前に現れた良型キジハタとの距離を縮めれないというムズ痒い思いをしたシーンもあったほど。もしこれで海況や透明度が悪かったら・・・突果的にも内容的にもかなり厳しい魚突きだったんだろうな〜。

 そんな感じで2時間が経過・・・。

 開始早々にキジハタを連発してからというもの、後が全く続いていない。魚影は比較的濃いのだが、どの魚種もサイズが今一つパッとせず。予定終了時刻まではまだ1時間以上あったが、とりあえず一旦エキジットをしようかな・・・と、半ば諦めモードで陸に向かって泳ぎ始めた時だった。

 水深7〜8mの中層をフラフラと泳いでいると、大きな根の岩肌でホバリングする1匹のキジハタを目撃する。サイズは45cm程度。ヤスを構えながら潜行を始め、順調に距離を縮めていった・・・が、そろそろ射程圏内に入ろうか?というタイミングで、キジハタが掟破りのクイックターン(涙)。そしてそのまま幅1m、深さ2m程の、根と根の間で出来た深い溝の中へと消えて行った・・・。
 息が続かなかったため、一旦浮上し、呼吸を整えて再び潜行を試みる。水深は12m前後。直ぐにキジハタの消えた溝の真横に着底し、ヤスを構えながらゆっくりと溝の中を覗いてみた・・・。中には大きめなヒゲダイが1匹居るだけで、残念ながらキジハタの姿は見えない・・・が・・・信じられない事にそれから数秒後、何の前触れも無く1匹のクエが、不意に溝の中に入ってきた・・・!


うぉぉ〜っ!!超ラッキーじゃん♪


 瞬時にクエにヤスを向ける。クエはこちらに気付く様子も無く、溝の中を低速で泳ぎ、少しずつこちらに近付いてきた。確実な射程圏内に入るまで待ち続けること僅か数秒・・・。手前のヒゲダイと奥のクエが重なり、完全な死角に入ったところでクエの頭部にロックオン完了!そのまま右腕を伸ばしていき、ヒゲダイで出来たブラインドからクエの眼球が覗いた瞬間に手の力を緩めた!!


KILL SHOT!


 クエが若干身体を捻らせていたため、斜め上から放ったヤスは綺麗に側頭部に入っていた。クエは身体を不自然に反らし、ピクリとも動かない。かなりの手応えはあったが、貫通したかどうかが定かではないため、油断は禁物。片手でヤスを握り締めたまま岩肌へと押さえ付け、溝の中に上体を突っ込みながらもう一方の腕を伸ばして鰓の付け根をガッチリと掴む・・・、これで勝負あり。
 海面にて鰓を抜き、ストリンガーに通して一呼吸・・・。チョッキを充填し直すと、余韻に浸る間もなく逃げられたキジハタの行方を追ったが、さすがに集中力が持続せず、その後は雑な潜行を繰り返すのみ。予定終了時刻も近づいて来たため、1本目はこれにて終了とした。


 ■ 2本目(トンネルポイント)

 水君の案内で新たなるポイントへ。未だ見たことも無いマゴチを求め、白い砂浜から2本目のエントリーを開始する。北風の影響をダイレクトに受けるポイントのため、波は若干高め。波打ち際では底砂が巻き上がり、エントリー直後の透明度は50cm程度しか見えなかった。沖へと泳ぐに連れて透明度は徐々に回復したが、海底にはマゴチらしきシルエットは全く見当たらず・・・。30分程で砂地での探索が退屈になったため、漁場を沖磯へと移し、ターゲットを根魚&イシダイに変更することに。

 砂地のフィールドにポツンと飛び出た沖磯。潮当たりが良く、その周囲には大きな岩が散在しているが、水深は深い所でも10m程度と非常に浅く、一見では大物の雰囲気を感じ取ることは出来ない。
 しかし魚影の面では想像を遥かに上回る好ポイント。波打ち際にはベイトフィッシュが沸いており、それを求めて40cmクラスのセイゴが軽く100匹以上。少し近付けば手の届きそうなところまで寄って来て・・・気付けば辺り一面スズキだらけ・・・。サイズがサイズだけに突くことは無かったが、見ているだけでも十分満足に価する光景だった。

 最初の獲物は沖磯到着から僅か数分後。水深5〜6mほどの岩陰でお休み中のスズキを、海面より確認。セイゴばかりを見ていたせいか、70cmクラスでもやたらと大きく感じた。水面にてゴムを引き、真上から潜行してロックオン。後ろが岩場だったため、キルショット狙いで慎重に的を絞ったが、少し手元が狂ってしまい辛うじて側頭部にヒット!久々にスズキの引きを体験し、目の前でエラ洗いを見せられた時は少々焦ったが、チョッキがしっかり効いていたため無事に回収完了。スズキ 69cm。

 その後も潜れば常に何らかの魚が目の前に群れている状態が続いた。沖磯を半分回りかけたところで、イシダイの群れに当たったが、サイズはどれも40cm以下。いくらゴリゴリ寄せても視界に映るのは縞模様軍団のみ。時折現れる60〜80cmクラスのコブダイや、70cmクラスのスズキ、良型のチヌ等をロックオンして遊んだが、食べ切る自信が無いためヤスは撃たず。時間も迫った終了間際、突然視界に現れた良型のキジハタに真っ向から勝負を挑み、距離を縮めてロックオン。横を向き、ヤスを撃つのは時間の問題・・・。今日はもう外す気がしませんでした。キジハタ 48cm。

 スパシオと行った最後の海は、記録にも記憶にも残る遠征となりました。

 今まで6年間、ありがとう。ご苦労様でした。>スパ号へ



場所 島根県 某所
今日の突果
天候 晴れ
海況 風速5m 波1〜2m
小潮 干潮 10:00
透明度 6〜10m
潜水時間 7:00〜13:15
最大水深 13.0m(27.6℃)
ヤス 3.2mチョッキ銛
フィン エスカペ
突果 クエ 59cm
キジハタ 48cm、42cm、38cm
スズキ 69cm
本日の食卓
刺身 クエ鍋 ホルモン炒め アラ煮
 クエはやっぱり美味い!サイズは大した事ありませんが、今まで食ったクエの中では一番美味かった!体型がデップリしていた割りには胃の内容物が全く無く、腹の中身は脂がギッシリ・・・。包丁を入れた時点で“こいつは旨いな!”、と確信できました。季節外れの鍋を堪能しつつ、ホルモン炒めやアラ煮の頬肉&ゼラチン質に舌鼓を打ち、家族と一緒に最後まで美味い酒を飲むことができました♪





REPORT TOP NEXT REPORT